1735  レシプロ機の速度記録はレーサー仕様に改造されたF8Fの850km/hですが、実用機での急降下制限速度の最も高い機体は何で何km/hですか?
おうる

  1. 回答の前に前提の確認が必要と思います。
    急降下制限速度はなんで決まるかというと、空気の圧縮性により操縦困難や意図しない挙動が出てくる現象があって、だいたいマッハ0.7ぐらいからそれが発生して危険なので制限速度が設けられます。
    M0.8〜1.2ぐらいを遷音速というのですがこの領域の空気力学はレシプロ機時代はまったく不明だったのです。
    ご承知と思いますが、音速は高度によって変化します。高度ゼロで340m/s、5000mで320m/s、10000mで300m/sとだいたい高度に反比例して遅くなります。
    ですのでM0.7が制限マッハ数として、時速単位の制限速度は高度によって変わってくるということです。
    なお時速単位の速度の場合、真対気速度(TAS)と計器指示速度(IAS)の違いの認識も必要です。
    両者の値は高度ゼロで同じとして、空気密度比の逆数の平方根に比例して差が広がります。
    さて制限速度はあくまでマニュアル上の制限なので、当然ながら制限超えちゃったけど大丈夫だったという話もあるわけです。
    制限速度は誰がどうやって決めるかというと、試作時にテストパイロットが命がけの急降下テストを何回も行なうという過程を経て決めています。
    テストでM0.9という記録もありますが、生還したからといってその速度が制限速度にはなりません。
    ほかに機重+パワーが足りずに遷音速まで加速しないという機もあります。
    あとはフラッターやエンジンの過回転といった要因も制限速度の理由になります。
    安全性で制限速度が決まっているのです。
    超音速

  2. >>1 回答ありがとうございます。

     ええ、だいたいそれらの理屈は把握したうえで、レシプロ機の空力的な強度・剛性を比較する上で急降下制限速度が一つの指標になるのかなと思って質問させていただきました。
    おうる

  3. 失礼しました。
    ご承知であろうと思いましたが、そうではない読者の方も意識して念のため書きました。

    WW2の米陸海軍戦闘機中最速の急降下制限速度を持つのは、意外なことにF4Fワイルドキャット、880km/hです。さすがに過度に頑丈と判断されたのか軽量化されたFM-2では685km/hに下がりました。
    ちなみにF4Uコルセア、F6Fヘルキャットは計画値の800km/h超では振動が大きすぎて初期は700km/h台半ばに制限、後期型で800km/h弱に制限緩和されたそうです。
    (以上、歴群シリーズ米海軍戦闘機)
    Bf109Fは750km/h
    三式戦飛燕は850km/h
    (丸メカ)
    スピットファイアの臨界マッハ数は0.85、テストでマッハ0.9に近い速度まで記録。
    F8Fベアキャットは制限マッハ数0.7。
    P-51は0.8
    P-38ライトニングは0.68
    (世傑)
    超音速

  4. >>3. 回答ありがとうございました。
     参考になりました。
    おうる

  5. 以上の情報から、急降下制限速度はM0.7で普通、速ければM0.8といった状況ですね。
    なお3.で書いた時速単位の速度は、引用元には明記してませんが、計器指示速度(IAS)だと思います。
    M0.7、0.8の高度別のIAS、TASを計算して表にしておきます。

    マッハ0.7における高度別の速度
    高度 IAS TAS
    0m 858km/h 858km/h
    2000m 765km/h 838km/h
    4000m 674km/h 816km/h
    6000m 586km/h 796km/h
    8000m 499km/h 775km/h
    10000m 414km/h 754km/h

    マッハ0.8における高度別の速度
    高度 IAS TAS
    0m 981km/h 981km/h
    2000m 874km/h 957km/h
    4000m 770km/h 933km/h
    6000m 669km/h 909km/h
    8000m 570km/h 885km/h
    10000m 473km/h 862km/h
    超音速

  6. >>5 追加の情報ありがとうございます。

     前から気になっていたんですが、急降下制限速度ってさすがに海面高度では(WW2ごろの機体なら)500km/h下回るような低い速度になりますよね?
    おうる

  7. http://www.wwiiaircraftperformance.org/mustang/mustangIV-divetest.html
    こちらでP-51の高度別制限速度がわかります。
    高度5000フィート(1524m)までしか定められていませんね。その下の高度の制限速度を示しても引き起こしできないでしょう。
    F6Fで限界速度でのダイブテスト中、タックアンダーに陥り引き起こし不能となったが高度1500mあたりで突然舵が効き、7.5Gの引き起こしで地面をクリア。最終的に高度750mだったという話があります。

    もちろん、わざわざ地表近くで高速を出すと乱気流とかバードストライク等で危険なのは言うまでもないですね。
    超音速


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