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Do335とデハビランドホーネットを比較すると、重量と翼面積はホーネットがやや小さい一方で、馬力は2割弱大きいです。Do335にはエンジンナセルがない分抵抗が小さいと思われますが、ホーネットも極限まで胴体を絞り込んでいるので空気抵抗に大きな差があったようにも思えません。 そう考えるとDo335がホーネットと同じ程度の速度が出せるというのが疑わしく思えてくるのですが、低空でテンペストをぶっちぎったという逸話もあるので実際のところどの程度の性能だったのでしょう。 エラガバルス |
- Do335は前面面積が小さいが、D.H.ホーネットのほうが翼面馬力は大きい。しかし最高速度はなんで同等なのかという疑問ですね。
結論から申し上げますと、串型エンジン配置の有利さが翼面馬力の違いよりも大きな抵抗削減となった、ということだと思います。
ナセルと胴体間の空気の通り抜け抵抗というのも発生しますし、推進式によるプロペラ効率の高さもあります。
質問者さんはそれらをわかったうえで、D.H.ホーネットだって極限まで空力的洗練をしているじゃないかという主張だと思います。
似た例を挙げます。
ロッキードP-38Lライトニングは翼面積30平米、アリソンエンジン1600HP(緊急出力)双発で最高速度666km/h/7600mという性能です。
同じエンジン双発のダグラスXB-42ミックスマスター爆撃機は翼面積51平米、最高速度660km/h/7140mとほぼ同じ速度性能なのです。
エンジンは串形配置ではありませんが胴体内に並列配置、延長軸で推進式二重反転プロペラを駆動する方式です。
翼面積が広く胴体は太いわけですから、エンジンナセルがないことによる空気抵抗の少なさと推進式プロペラの有利さがよくわかります。
むしろD.H.ホーネットはよくここまで高速にできたと思います。Do335と同じDB603双発のメッサーシュミットMe410は最高速度630km/hですから。
超音速
- 確かに比較的資料の残っている米軍機同士で比較するとナセルのない飛行機の有利さがわかりますね。ありがとうございます。
エラガバルス
- 超音速さん、重箱の隅を突っつくような話で申し訳ないのですが
ツインマスタングは双胴、1600馬力のアリソンエンジンで742kmというスペックですが
これはコックピット用の胴体が無いからという事でよろしいのでしょうか?
まさのり
- >これはコックピット用の胴体が無いからという事でよろしいのでしょうか?
そのとおりです。
ツインマスタングの二つの胴体は間隔が離れており通り抜け抵抗の影響も少ないと思います。
超音速
- 超音速さんありがとうございます。
まさのり
- 追記
「通り抜け抵抗」は干渉抵抗ともいいます。
通り抜け抵抗は過去ログで他の方が使っていた用語で、つい私も使ってしまいましたが専門的には干渉抵抗のほうが正しいと思います。
超音速
- https://www.enginehistory.org/Piston/Allison/AllisonSpecs/AllisonSpecs.shtml
緊急出力1600HP×2のP-38L(V-1710-111/113)に対してXB-42は同1900HP×2(V-1710-129L/R)
P-82E/F/Gも2200HP×2(V-1710-143/145)出るようです
Do335は片発停止時、前エンジンだけで飛ぶより後ろエンジンだけで飛ぶ方が速度が出た、との記述が世界の傑作機No135 P37にあり
プロペラ直径は前3.5m、後3.3m(同本P34)と小さいながら、頭からプロペラ後流をかぶって飛ぶのは抵抗が大きいという事ですね
プロペラ効率だけで見れば乱れのない流れの中で回る牽引プロペラの方が良いと、どこかで読んだ事がありますが
D0335の場合、十字尾翼による整流効果で後プロペラの効率が上がるのかもしれません
https://en.wikipedia.org/wiki/Pusher_configuration#Propeller_efficiency_and_noise
ガス欠
- 機体の前後にプロペラがついた乗り物について推進効率を戯れ計算してみました。
------------------------------------------
-------前ペラ-----後ペラ
0 → 0 →
V ← ●■■■■●
0 → 0 →
-流体→+u1増速 →+u2増速
m1吸込 m2吸込
・単位時間にプロペラを通過する空気量:それぞれ、m1、m2 (kg/s)
・機速:V (m/s)
・各プロペラによる風速増加量:それぞれ、 u1、u2 (m/s)
前ペラの式:
@推力:T1 = m1・u1
A仕事:E1 = T1・V = m1・u1・V
前ペラ周りの空気の式から:
Bエネルギの消費量:
P1 = (1/2)・m1・{ (V+u1)^2 - V^2 }
= m1・u1・V・{ 1 + (1/2)・(u1/V) }
これらから
C前ペラの推進効率:
η1 = A/B = 1 / { 1 + (1/2)・(u1/V) }
⇒前ペラの効率を上げるには、(u1/V)を小さくするのがよい。プロペラは大直径のものがよいそうです。
後ペラの式:
D推力:T2 = m2・u2
E仕事:E2 = T2・V = m2・u2・V
後ペラ周りの空気の式から:
Fエネルギの消費量:
P2 = (1/2)・m2・{ (V+u1+u2)^2 - (V+u1)^2 }
= m2・u2・V・{ 1 + (u1/V) + (1/2)・(u2/V) }
これらから
G後ペラの推進効率:
η2 = E/F = 1 / { 1 + (u1/V) + (1/2)・(u2/V) }
ムリヤリな解釈ですが、u1がマイナスだとトラクタ式より効率が高くなり得るということかとも思いました。船でいうところの伴流ですかね。。ただ前ペラは自然な流れ/後ペラはおそらく乱れた流れであり、効率があがるかどうかは微妙かなと素人の感想です。人力飛行機などはプッシャー式がありますが、どのような意図でプッシャー式をとっているのでしょうね。無人機もプッシャー式が多いですが、あれは運用条件を絞っているのかもしれません。
最後に
H前ペラ後ペラ纏めての推進効率:
η = (A+E) / (B +F) = 1 / [ 1 + (1/2)・{(u1/V) + (u2/V) + (m2 - m1)・(u1/V)・(u2/V)/(m1・(u1/V) + m2・(u2/V))}]
数式はおかしい可能性がおおいにあるので、何か気付きがあれば指摘頂きたいところです。だが文字掲示板では何やろうとしているか汲み取るところからして難しいですよね。
太助
- 前後プロペラの距離が遠いとu1は減退し、気流を下向きに曲げる主翼を間に挟めばプロペラ後流の完全なオーバーラップは狙えないです
前掲の世界の傑作機No135 P37には
Do335以前の串型機(前後エンジン機)はDo335とは逆に、前エンジンだけで飛ぶ方が後エンジンだけで飛ぶより速かったとの記述もあります
飛行機の伴流効果について
https://www.cradle.co.jp/media/column/a114
ガス欠
- おお、ガス欠さん読んてくれたんだ!コメントありがとうございます。
飛行機(水ではなく空気中)においては伴流の幅が狭く伴流効果はあまり見込めないという点ですね。これはご指摘の通りなんですが、>>8で後ペラのみの推進効率を推定した時に、謎の項がでてしまったんですね。前提や式がまずかったのかとも考えましたが、おそらく後ペラ推進効率η2の式中のu1はマイナス値をとる場合は船でいう伴流項かな?とムリヤリな解釈をしました。飛行機の場合は、プッシャー式のみの場合はu1は極めて小さなマイナスの値をとると予想され、伴流効果があまり見込めないのはご指摘の通り。前後にプロペラがある飛行機ではu1はプラス値が予想され、値が大きくなる程効率低下になる項目になります。
後ペラが吸込む流体の速度は前ペラの吐出した流体の速度よりも減退しているとのご指摘ですが、これは影響小かと思いモデル化せず「前ペラの吐出速度=後ペラの吸込速度」としました、戯れ計算ですので。実際はどの程度減退するか何かデータはお持ちでしょうか?尾翼面積の決定にも関係するデータかと思いますが。
太助
- 前ペラの後流が後ペラにジャストフィットしない事はすでに書きました
前ペラの直後に後ぺラがある(u1をそのまま受ける)二重反転プロペラは単回転プロペラより同じピッチ角で最大効率が0〜6%高い
と飛行機設計論という本に書かれています
山名正夫さんと中口博さんの共著となるこの本は長らく絶版でしたが最近再販されました、電子書籍版もあります
より詳細なプロペラ効率の求め方も、尾翼容積の求め方がプロペラ機とジェット機で違う事も書かれていますので是非読みましょう
V=速度 n=回転数 D=プロペラ直径
ガス欠