1799 第2次大戦中の航空用ガソリンエンジンは、主にOHVが使われていたそうですが、DOHCにすれば大幅な高回転化が出来たのでしょうか?それともビッグボア過ぎて大差ない程度の回転数にしかならないのでしょうか?
かつ

  1. 主にOHVなんて事は無いですよ。 マーリンもグリフォンもDB600シリーズもSOHCです。
    当時はバルブクリアランス調整が現場で必要で、DOHCは重量のハンディ以上にメンテ性の悪さが問題になりそうです。

    また、航空機用エンジンの高回転化はあまり嬉しくありません。
    プロペラ回転数はせいぜい1500rpm程度。 遊星ギアで減速する訳ですが、この減速比は実用的には2:1程度が限界です。 つまり3000rpm以上回すエンジンだと2段減速が必要で複雑かつ重いギアになります。

    なので3000rpm以下で、平均ピストンスピードの上限からストロークが決まり、そこからボアが決まってきます。

    DOHCにして信頼性と引き換えに高回転化でパワーを出すのは航空機用としては望ましくないし、3000rpm以下じゃDOHCのメリットは無いと言う事です。

    パワーが欲しければ排気量を増やすか過給圧を上げれば良いだけです。

    わんける

  2. 試作品は除き、主要なエンジンのなかでDOHCのものは以下の例があります。
    英国 ネイピア・ライオン(Napier Lion)、W型12気筒液冷。
    ソ連 ミクリンAM-38(Mikulin AM-38)、V型12気筒液冷
    イタリア イソッタ・フラスキーニ デルタ(Isotta Fraschini Delta)倒立V型12気筒空冷。

    超音速

  3. ひょっとしてOHVって星型エンジンを考えていましたか?

    少しでも全面投影面積を小さくしたい航空機の場合、まして頭が大きくなりがちな星型エンジンのシリンダヘッドの上にさらにカムシャフトを乗せると、ますます直径が大きくなってしまいます。

    英国ではブリストルがヒドラと言うエンジンを作って3600rpmまで回せると目論んでいたけどモノにはなりませんでした。
    2重星型16気筒DOHCと言うマニアが喜びそうなエンジンでした。
    https://oldmachinepress.com/2018/02/20/bristol-hydra-16-cylinder-radial-aircraft-engine/

    わんける

  4. ネイピア・ライオンは1920年代の成功作のひとつです。
    一気筒あたりの排気量は小さめで高回転型。減速ギアでプロペラ軸を駆動する当時としては先進的エンジンでした。
    シュナイダートロフィーで使われたレース仕様では3600rpmで1350hpを出しており、DOHCの効果は間違いなくあると思います。
    しかし排気量が小さいため限界があり、より大型のロールスロイスV12気筒に取って代わられました。

    ミクリンAM-38は有名なIl-2シュトルモビクのエンジンです。
    気筒は大きめですが、原型のBMW VIよりは高回転になっており、DOHC化は色々な出力向上策のひとつです。
    ただ、次作のAM-42ではより高回転・高出力化したのにSOHCに戻っています。
    このため信頼性は上がったそうです。
    吸気効率に影響はなかったのかと思いますが、高ブースト化とともに圧縮比を下げているのが関係するかもしれません。

    イソッタ・フラスキーニ デルタは1930年代のエンジンで前述のとおり珍しい倒立V型12気筒空冷です。
    気筒は栄エンジンのそれに近いサイズです。
    DOHCのおかげでバルブ挟み角を大きくすることができ、吸気効率もよさそうです。
    ただし空冷のため回転数も栄と同じぐらいです。
    700HP級では中途半端で、大戦期に使われることはほとんどありませんでした。

    超音速

  5. 試作エンジンでDOHCのものは、英国のフェアリーP.24モナーク(Fairey P.24 Monarch)というエンジンがあります。
    フェアリー社もエンジンを研究していたのです。
    P.24はH型24気筒液冷で、ネイピア・セイバーと違って気筒は縦配置、二重反転プロペラ用ギアボックスを備えています。
    気筒はセイバーより一回り大きめで回転数は低めの3000rpm、本体重量は同じぐらいです。
    開発は比較的順調で1941年前半には2000hpに達しており、信頼性もあると評価されていました。
    しかし諸事情で生産発注には至らず、米国で生産する話もありましたが実現しませんでした。
    その後のセイバーが苦労したことから不採用を悔やむ声もあります。

    セイバーはスリーブバルブで3700rpmでしたが、ライオンで経験のあるDOHCにしていればよかったんじゃないかと個人的には思います。

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  6. 早速のご回答ありがとうございます。空冷星形エンジンがOHVに見えたため、水冷もそうだと思っていました。AM−38のようなビッグボアエンジンでも高回転化ができたのは驚きです。プロペラ効率のせいであまり高回転化するメリットがないというのも納得です。有難うございました。
    かつ


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