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レシプロエンジンの燃費について教えてください。 ガスタービンエンジンなどは低出力域での燃費が悪いと聞きます。 つまり投入する燃料に比べて得られる出力の比率が少ないということなのでしょうが、レシプロエンジンはどうなのだろうと思って質問しました。 例えば2000馬力エンジンを2000馬力で運転した場合と1000馬力で運転した場合、時間あたりの燃料消費量や距離あたりの燃料消費量で後者が有利になるのは当然ですが 発生馬力当たりの燃料消費はどちらが有利でしょう。 もちろん、各エンジンによって差異はあると思いますが、傾向がわかれば嬉しいです。 匿名 |
- 燃費率を意味する英語はfuel consumptionです。
例えば「R-2800 fuel consumption」で検索するとデータが色々出てきます。
燃費率に使う単位はg/hp/hr、つまり消費量/馬力/時間で表現します。
データを見るときの注意は、それぞれ量なのか重さなのか、時・分・秒どれを使うのか、ヤードポンドなのかメートルなのかで単位の表記が変わってくることです。
ガスタービンエンジンの燃費率は離昇時より巡航時のほうが悪いのですが、レシプロエンジンの場合は逆になります。
ガスタービン(ターボプロップ)は機種によりますが巡航時は離昇時よりだいたい1〜2割ほど燃費率が増加。
レシプロエンジンは、離昇時の燃費率が巡航時より4〜5割ほど増加します。
離昇時はクランク軸の回転数を上げるので、駆動抵抗がその分増えるからですね。
当然ですが、同系統のレシプロエンジンでもサブタイプによって燃費は違い、全開高度が上がれば過給器増速比が上がるため燃費率もそのぶん上昇します。
超音速
- 離昇2000馬力の誉二一型の取扱説明書の記載では
離昇運転(離陸の際にも殆ど使いません)時に
航空九一揮発油260グラム/馬力/時 補助燃料として水メタノール 125グラム/馬力/時
公称一速 250グラム/馬力/時 水メタノール115グラム/馬力/時
公称二速 300グラム/馬力/時 水メタノール150グラム/馬力/時
7/10公称 一速 200グラム/馬力/時 二速 270グラム馬力/時
5/10公称 一速 200グラム/馬力/時 二速 230グラム馬力/時
2/10公称 一速 190グラム/馬力/時 二速 215グラム馬力/時
また航空九一揮発油の時間当りの消費量は
巡航時には140リットル〜150リットル程度ですが、
離昇運転時には720リットル程度に増大します。
BUN
- > ガスタービンエンジンの燃費率は離昇時より巡航時のほうが悪い
そんなことはありません。
ささき
- > 駆動抵抗がその分増えるからです
嘘です。
燃料過濃で運動するからです。
ささき
- まずガスタービンだから、レシプロだからというザックリとした分類で燃費の傾向を比較することはナンセンスです。
レシプロエンジンにしろガスタービンにしろ、そのエンジンが想定している出力域での定常運転がもっとも燃費が良くなりますが、それはそのエンジンがどのような環境下でどのように使うことを想定して設計されたかによって全く違います。また、それぞれ得意な分野、不得意な分野があります。
ガスタービンエンジンに限りませんが巡航時より離陸時の方が燃費が良くなるなんてことはまずあり得ません。
旅客機用ジェットエンジンなどでは離陸する際の最大出力時になると、燃料の噴射量よりも水の噴射量の方が大きくなるので、そのことを誤解しているのではないかと思います。
ガスタービンエンジンにしろレシプロエンジンにしろ、燃費という面で苦手とするのは部分負荷燃費……すなわちある運転状態から別の運転状態へ出力を変化させる場合です。ただ、ガスタービンエンジンの方がレシプロエンジンよりも部分負荷燃費は悪い傾向にあります。巡航時は燃焼の制御がもっとも最適化しやすい運転状態であるため、どのエンジンであっても燃費は最良の状態になります。
その定常運転(巡航状態)での性能はというと、どれだけそのエンジンが適切に設計されたかによります。
ガソリンレシプロエンジンより、ガスタービンエンジンの方が出力当たりの燃費は高くできますが、あらゆる燃機関の中で2サイクルディーゼルが出力当たりの燃費性能は最も高いです。ただしこれは重油を燃料とする船舶用の大型機関に限った話で、航空機にも車両にも積めません。
航空機の中でレシプロエンジンとガスタービンエンジンのどちらが最適でどちらが燃費に優れているかも、その航空機とのマッチング次第です。
1000馬力未満の小型航空機では今でもレシプロガソリンエンジンが主流ですが、大出力を要する中型以上の航空機でレシプロエンジンを搭載している航空機なんてほぼありません。
おうる
- https://en.wikipedia.org/wiki/Thrust-specific_fuel_consumption
こちらでジェットエンジンの巡航時と離昇時の燃費率(TSFC)が比較できます。
https://en.wikipedia.org/wiki/Brake-specific_fuel_consumption
ターボプロップの場合も出力を下げていくと燃費率(BSFC)が上がっていくのがわかります。
元質問には「ガスタービンエンジンなどは低出力域での燃費が悪いと聞きます。つまり投入する燃料に比べて得られる出力の比率が少ない」とありますので、質問主さんの認識は正しいと思います。
>嘘です。
燃料過濃で運動するからです。
燃料過濃だからという点は同意しますが、「嘘です。」というコメントは説明を頂きたいと思います。
https://dieselnet.com/tech/engine_efficiency_friction.php#fric
機械翻訳し引用「摩擦を減らすことができるもう 1 つの一般的なオプションは、エンジンの速度を下げることです。摩擦力損失は平均ピストン速度に比例して変化する傾向があり、より低いエンジン速度で一定量のブレーキ力を生成する場合、摩擦損失は低くなります。」
超音速
- 回答いただきました皆様、いつもありがとうございます。大変参考になりました。
個人的な話になりますが、
かつてウォーバーズの別館?に「架空期の館」というHPがありまして、最近これを眺めるのにハマっております。
特に「競合試作のお部屋」などには「1941年・独逸、爆装1000tで航続距離15000kmの大西洋横断爆撃機を作れ」などといった挑戦しがいのある課題が数多く、自分だったらどんな機体を提出するか想像するだけで楽しいものです。
ターボファンの対潜哨戒機で哨戒中にエンジンを一発停止させて哨戒時間を延ばすものがあったような気がしますが、
ここの回答を見る限り、レシプロ機だとちょっと非現実的みたいですね。
どうもありがとうございました。
匿名
- 訂正です。
爆装1000tと書いたものは、1000sの間違いでした・・
(第10回競争試作 飛行機の部)
匿名
- P-3C哨戒機は6.で述べた理由により、ロイター飛行中は4発のうち2発を止めて飛行します。
フェアリー・ガネット哨戒機も、ダブルマンバ双子エンジンのうち1つを止めてロイター飛行しますね。
>レシプロ機だとちょっと非現実的みたいですね。
バート・ルータンの設計した長距離記録機ルータンModel72ボイジャーは小型レシプロエンジン双発ですが串型双発となっており、離昇時のみ両方のエンジンを使用し、巡航時は片方のみで飛行するそうです。
なお、航続距離4万212kmを記録しました。
もちろん実用機では非現実的な方法だと思います。
超音速
- >6.
TSFCの計測条件は確かめましたか。
ささき
- >6.
>ターボプロップの場合も出力を下げていくと燃費率(BSFC)が上がって
それはプロペラ効率の問題です。
ガスタービンエンジン単体での燃費と同列に論じることはできません。
ささき
- >6.
>「嘘です。」というコメントは説明を頂きたい
・離昇時の回転数と巡航時の回転数には大差ない場合が多いです。
・メカニカルロスには種々ありますが、摩擦損失を特にピックアップした理由が不明です。
ささき
- >9
ありがとうございます。
ちなみに自分もHe177グライフのような双子エンジンにして、巡行中は片方を停止して動力系から切り離し・・などと想像してました。
競合試作をきっかけに他にもいろいろ考えましたが、これ以上書き込むと当初の質問内容から逸脱しそうなので、僕の話はこの辺にしておきます。
ガスタービンエンジンとレシプロエンジンの特性の違いについての二人のお話、奥が深いようで興味深く拝見させていただいております。
匿名
- こんばんは。
レシプロエンジンはどうか知りませんが、ガスタービンの方だけコメントします。
ガスタービン推進航空機(ターボファンエンジン機など)の効率についてですが、燃費率に関係するのは↓の全体効率かと思います。(アフターバーナは別としましょう。)
・全体効率 = サイクル効率 × 推進効率
https://www.hq.nasa.gov/pao/History/SP-468/ch10-3.htm
・サイクル効率:ブレイトンサイクル。圧縮機の圧力比が大きいほど、サイクル効率が高くなる。
⇒運転状態でいえば、目一杯出力を出している(燃料量・空気量最大)状態が最も効率が高くなるのではないか。ただし材料の温度制限はありますね。
⇒逆に部分負荷時には圧縮機の羽根などを制御し、空気量・動力、そして燃料量を少なくすると思いますが、結果としてサイクル効率は低くなる。
↓の第8図)をみました。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsass1969/33/376/33_376_303/_pdf
他にエンジンなどの保有熱量や放散熱量を考慮すると、やはり部分負荷でのサイクル効率は厳しいと思います。
一方で、
・推進効率:お手軽にWikipediaですが、排気速度と機速の比率が上がると推進効率は低下します。
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Propulsive_efficiency
http://users.encs.concordia.ca/~kadem/Rolls%20Royce.pdf
⇒運転状態でいえば、機速を上げれば(機速を排気速度に近づければ)推進効率も高くなるのかなと思いました。
で、燃費率や全体効率はどうなるか?
↓のfig.2や3)をみました。民間機では離昇時も巡航時もTSFCはほぼ同程度で最適化されているのかなという感想です。
https://arc.aiaa.org/doi/full/10.2514/1.C035200
(離陸時などはサイクル効率は高いが、推進効率は低くなる。巡航時は条件にもよるがサイクル効率は低めで、推進効率は高め。
巡航速度を上げると、サイクル効率も推進効率も高くなり全体効率がよくなるが、必要な推力も上がるため燃料消費量は増える。単位距離あたりの燃費やらフライト時間やらで最適速度がどこかにある、という感じでしょうか?)
↓は最初のリンクの再掲です、fig.10.2)をみました。
https://www.hq.nasa.gov/pao/History/SP-468/ch10-3.htm
太助
- >それはプロペラ効率の問題です。
BSFCはエンジンダイナモメーターで測定するのでプロペラ効率は関係ありません。
>離昇時の回転数と巡航時の回転数には大差ない
http://www.warbirds.sakura.ne.jp/siryo/frank.htm
当サイト内に掲載されている四式戦の説明書ですが、エンジン回転数は離昇および緊急2900rpm、巡航1800〜2000rpmです。約1.5倍の差ですが「大差ない」のですか?
超音速
- >15.
超音速さん
ご指摘ありがとうございます。
わたしが間違えていました。おわびします。
TSFC、BSFCともに、離昇時は海面高度で大気圧が高く空気の濃い状態、
巡航時は高空で空気の薄い状態です。
ですからフルロードの離昇時は空気が濃くTSFC、BSFCともに燃費が良く、
パートロードの巡航時は燃費が空気が薄く燃費は悪くなるでしょう。
つまり運転条件が違うのです。
だから「低負荷の方が燃費が良い」とは一概には言えないと思います。
いかがでしょうか。
ささき
- ジェット機の巡航時の所要推力はいくらか?
ボーイングB.777-300は総重量約299t、揚抗比を17とすると巡航時推力は17.6tとなります。
エンジンはRRトレント892、離昇推力は41.7tの双発ですから、21%の推力でよいはず。
しかしすでに上げたリンク先https://en.wikipedia.org/wiki/Thrust-specific_fuel_consumption
では、巡航推力は80%となっています。
太助さんが上げたリンク先でも80%あたりまでTSFCはほとんど同じと解釈できます。
手元の資料から関連するグラフを画像掲示板に転載します。
ジェットエンジンは、低高度では速度の増加とともに推力が減少し、マッハ0.8では推力が80%ほどになります。
高度が上昇しても推力は減少し、高度1万Mでは約25%に減少。
しかし高高度では逆に速度増加で推力は増加という傾向になる。
飛行動圧と所要空気流量との関係からこうしたグラフを描くのだと思います。
従って高度1万Mでマッハ約0.8という状態での最大推力は離昇時の30%程になるため、巡航推力はさらにその80%だから、離昇時と比較すると20%台となります。
燃料が減って機体が軽くなると所要推力も小さくなりますが、高度をさらに上げれば最大推力も小さくなるので「80%」を維持しつつ速度も維持できます。
実際の旅客機運航も燃料減少とともに階段状に高度を上げて飛行します。
燃費率(SFC)のグラフは速度の増加とともに増加、高度が上昇すると減少するという傾向になっています。
高度1万M・マッハ約0.8の燃費率は高度・速度ゼロの状態の1〜2割ほど高い値となるようです。
超音速
- 戦闘機などの出力重量比が高い飛行機は離昇と巡航の推力比が大きくなるため巡航では部分負荷運転となり燃費率も大きくなってしまうと考えられます。
旅客機の中・低高度に下りてからの空中待機や、哨戒機のロイター飛行も飛行距離より滞空時間を重視するため低出力の運転となるため、同じく燃費率も上がると思います。
なお、9.で上げたP-3Cとガネット哨戒機のようなエンジン半数停止はジェット機のP-1では行いません。
停めたエンジンが空気抵抗となって逆効果だからです。
超音速
- >>14では、
・全体効率 = サイクル効率 × 推進効率
としましたが、全体効率とTSFCの関係を導出しておきましょう。
「効率=仕事量÷入熱量」ですので、
・全体効率 = ( 推力 × 機速 ) ÷ ( 燃料消費量 × 燃料発熱量 )
となりますが、「TSFC = 燃料消費量 ÷ 推力」から、
・全体効率 = ( 機速 ) ÷ ( TSFC × 燃料発熱量 )
と変形できます。燃料発熱量はだいたい43MJ/kgで一定値です。
よって、
・全体効率 = 機速 ÷ TSFC × ( 定数 )
・TSFC = 機速 ÷ 全体効率 × ( 定数 )
となります。
つまり機速を押さえておくことも重要と思われ。あと単発、双発、四発でも状況は変わるかも。
https://okinawa-airport-terminal.com/specific_thrust/
↑のサイトでB777-200に搭載可能なエンジンについて情報がありました。
GE90-85B)
https://okinawa-airport-terminal.com/ge90series-spec/
・TSFC 燃料消費率:0.552 (lb/hr/lbf)、(巡航 35,000ft M0.8)
・TSFC 燃料消費率:0.292 (lb/hr/lbf)、(T-O S/L)
とのこと。
戯れ計算ですが、
高度35,000ftの音速が300m/sec、TSFC=0.552 (lb/hr/lbf)、燃料発熱量=43MJ/kgとすると、
GE90-85B)の巡航時効率は、
・巡航時の全体効率:0.357 (35,000ft M0.8)
となりました。
備考)計算式=300*0.8/(0.552/9.80665/3600)/(43*1000*1000)
一方で、離陸時の効率ですが、TSFC=0.292 (lb/hr/lbf)とし、燃料発熱量=43MJ/kgを前提に、
Take-Off機速をインターネット上で拾ってきた値 85m/secとすると、
・T-O時の全体効率:0.239
となりました。
これをみると離陸時の効率は悪そうですが、これは機速をイジることで数字が変わってきます。仮にMach数を0.4にすると、全体効率は0.382となり巡航時とほぼ同じになってしまいます。TSFC値算出の前提条件を要確認ですが、巡航時より低い値の0.239は大小関係でいえば判る値の気がします。
ちなみに、↓のファイルには、
・Design Point (Cruise)
・Off-Design Point (Take-off)
という記述がありました。
https://www.kimerius.com/app/download/5781574315/The+GE90+-+An+introduction.pdf
その他参考(和文)です。
https://www.jal-foundation.or.jp/shintaikikansoku/sankoushiryo_kitai.htm
太助
- 追伸)
https://okinawa-airport-terminal.com/ge90/
この頁↑の方がよかった。GE90-85BのTSFCがまとまっている。
↓の頁をみても、Overall efficiencyの傾向はあっていそう。
https://web.archive.org/web/20161124123017/http://adg.stanford.edu/aa241/propulsion/sfc.html
太助