237 アイオワ級戦艦の主砲についてなのですが、ウィキペディアの大和型戦艦の項目に以下の文章があります。

「元来アイオワ級の軽量長砲身Mk7の場合最初から燃焼速度と最大圧力を考慮した低圧装薬に変更しなければならず、サウスダコタ級の備砲であるMk6そのままの高圧装薬で発砲した場合、主砲腔内の摩擦で弾速は遅くなり威力が低下するのは当然である」

との事なのですが、実際にアイオワ級の装薬はサウスダコタ級とは別物なのでしょうか?
この事例の参考文献として小林源文氏の「武器と爆薬」という書籍が出されているのですが、この書籍の中では対戦車砲、あるいは戦車砲として使用しているドイツ軍の火砲を例題としております。
その中では砲身長を決める重要な要素は「発射装薬の薬径(棒状装薬の太さ)」とされており、戦艦のような薬嚢砲では該当しないのではないかと思ったのですが……。

実際にはどうだったのでしょうか?
薩摩

  1.  日本の重巡や戦艦では、薬種、薬径、薬長を、砲身長や弾重や目標初速に合わせて変更してます。
     米軍でも45口径と50口径では最適解は当然異なるでしょうから、変更してきても不思議は全く無いかと思われます(というか変更しないほうが不思議でしょう)
    SUDO

  2.  1980年代の現役復帰後、徹甲弾射撃には適するが、榴弾射撃にはやや難があるとされた元来のMk7用の装薬と共に、「ほぼ同様のものだが成分が若干違う」45口径砲用の装薬を詰め替えた装薬が精密射撃用として供給されています。
     これから見ても、45口径砲と50口径砲では装薬の成分が若干異なるのは確かと思われます。
    大塚好古

  3. 所定の弾種を計画初速で発砲するためには、当然ながら最適な速度曲線が得られるような筒圧曲線となるよう装薬の燃焼速度、燃焼ガス量が設定されます。

    したがって、Mk6は45口径、Mk7は50口径ですから、同じ弾種を撃つにしても同じ装薬を使うことは基本的にあり得ません。

    実際、MK7では、常装薬は薬種SPD、6薬嚢、計660ポンドを使用して、2700ポンドAP弾で計画初速2500ft/sec、1900ポンドHC弾の場合に計画初速2690ft/secが得られる様になっています。
    これに対してMk6の場合は、常装薬は薬種SPD、6薬嚢、計535ポンドを使用して、2700ポンドAP弾で計画初速2300ft/sec、1900ポンドHC弾の場合に計画初速2525ft/secが得られる様になっています。

    どちらも同じSPDですので、薬質は同じですが、薬量と共にペレットの大きさと形状も異なるはずです。 残念ながらそのペレットのデータがありませんが、当然ながら長砲身のMK7の方がより緩燃性の大きさ及び形状であると考えられます。

    (ご存じとは思いますが、米海軍は伝統的に多孔型又はロゼット型のペレットを使用しており、日本海軍のような紐状あるいは帯状のものはほとんど使いません。)

    なお、SPDであれば基本的には同じ薬質ですが、製造されたロット(製造場所と期日と使用された材料が同一のもの)が異なると、製造上の微妙な差違により、燃焼状態に違いがでます。 したがって、通常は1回の射撃においては必ず全て同一のロット番号のものを使用するようになっています。

    また、ロットの差違による微妙な初速差は、ごく小さな場合は実際の射撃における射弾誤差の中に含めて修正し、それなりの誤差がある場合は、そのロット番号毎の射表の修正表が出されます。

    更に悪いことには、火薬類は経年変化を生じますので、定期的にキチンと検査をしたものを使用する必要があります。 大塚氏ご指摘の件は、おそらく正規の装薬の品質のバラツキをなくすための応急的な措置だったと考えられますが、最初の射撃の時には正規のものと違う分だけ修正が必要となったでしょう。 もちろん、装薬の品質が均一であればそれ以降はそのデータを射表に加味すれば問題ないわけですが。

    ご参考までに。

    艦船ファン

  4. >3

     45口径砲用装薬の供給は、「正規の装薬の燃焼速度が遅いことが影響して、榴弾射撃時の精度が低下する」という問題解決のために供給された、とされていますので、「正規の装薬の品質のバラツキをなくすための応急的な措置」とも言い難い様な気もします。
     因みにMk7用装薬の品質均一化を目的とした装薬詰替作業は、アイオワ級の再就役後これと別途に実施されています。
    大塚好古

  5. >4.
    >正規の装薬の燃焼速度が遅いことが影響して、榴弾射撃時の精度が低下する
     同じロットの薬嚢を使って“均一”に遅いならば、射弾精度は低下することにはなりません。 全射弾で“均一”に初速が変わるだけなら、単にその分だけを補正すれば済むからです。 射弾精度が低下するというのは、各砲、各斉射の射弾毎にバラツキがでて安定しないからに他なりません。 即ち、装薬の燃焼の仕方がバラバラということであり、品質が均一でないということです。

    艦船ファン

  6. >5
     緩燃装薬に長砲身ですと、砲口外まで燃焼が続く場合があります。その燃焼がかなり強圧を残していた場合、砲弾は方向を出た後も砲身という支えを失った状態で押さることになります(そして一部の燃焼ガスは砲弾の周囲で膨れ上がって、好き勝手に様々な方向から力をかけてくるでしょう)
     燃焼が均一に遅くとも外乱は均一ではないし、砲弾はあまり多方向から押されることを想定した構造でも無いでしょうから精度は低下します。
     そしてこれは徹甲弾よりも軽い榴弾の場合で置きやすいであろう事も想像できます。
    SUDO

  7. >6.
     砲口から噴出する燃焼ガスの問題は別にこのMk7に限った話しではなく、砲熕武器の全てについて多かれ少なかれ発生する問題です。 ですから、砲の振動や弾の砲内での運動などと共に、「過渡弾道」として弾道学上の1研究分野にもなっています。 この分野では現在でも「Gun Jump」など理論的に完全に解明されていない事項もあります。 もっとも、この燃焼ガスが弾道に及ぼす影響は他の要素に比べれば遥かに小さいのですが。

     そして、先にも書きましたとおり、米海軍では伝統的に緩燃性の装薬を使いますので、砲口炎の問題は周知のことであって、当然のこととして砲の設計・開発段階で考慮されている事項ですし、この問題も含めた射弾性能についてはDahlgrenで徹底的に解析されました。

     ですからその結果として、個々の使用砲種と弾種の組合せによる最適な薬種、形状、薬量が決められたたわけであり、更にはこれを使用した射弾の精度が単砲公誤又は散布界として全ての射表に記載されているのです。 Mk7でのHC弾についても例外ではありません。

     したがって、ご指摘の理由による問題が実戦場裡において突然発生するものでも、また認識されるものでもありません。 もし予期せぬ射弾精度不良がシステム及び弾以外の原因で発生するとすると、それは装薬の不良(製造上、経年変化、管理不良など)でしかないわけです。

    (あまり考えられませんが、最低限72時間は定温の状態とし、その薬温を使用することになっていますが、これを厳守していないとバラツキの原因になりますが・・・・。)
    艦船ファン

  8. >緩燃装薬に長砲身ですと、砲口外まで燃焼が続く場合があります。
    なんで長砲身だと、砲口外まで燃焼が続くんですか?
    長砲身だからといって過度に緩燃装薬にしすぎるとって意味かな?
    ど素人

  9. >8
     舌足らずでしたね。そのとおりです。
    SUDO

  10. >8. 9.
     砲弾が砲口を離れる時点で所要の初速を得るためには、適切な加速による速度曲線を描くように燃焼ガスによる「筒圧曲線」が計画されます。

     古い時代は装薬の燃焼速度をコントロールすることが難しかったため、早い段階で最大筒圧に達してあとは下降曲線を画きます。 この場合、最大筒圧は非常に大きくなりますので、砲身形状は根本が丈夫(太い)で砲口に行くほど薄く(細く)なります。

     その後薬質や形状の改良により燃焼速度をコントロールできるようになりますと、最大筒圧点を前(砲口側)にずらし、かつ最大筒圧を低く抑えることができるようにます。 その代わり、砲口までの筒圧はそれまでよりも高くなります。 つまり、急カーブの山形から緩い丘上の形にするわけです。 燃焼ガスの全仕事量は同じながら必要な加速を得られることになります。

     これによって、砲身形状も砲尾部分を厚い強固なものにせずにすみますから、全体をホッソリとしたスマートな形状として軽量化することができます。

     特にMK7の様に50口径もある長砲身の場合、その砲身強度の観点からも緩燃性の装薬により在来のものよりゆっくりと最大筒圧に達し、後は砲口までそれなりの筒圧を維持しつつ砲弾を所定の初速まで加速させることになります。

     この最後まで比較的高い筒圧を維持するためには、長い時間装薬をじわっと燃やさなければなりませんから、どうしても砲口までにそれが完全に終わり切ることができません。 決して過度に緩燃性にしているわけではなく、砲口までの筒圧を確保する必要上どうしてもそうならざるを得ないのです。

     ですから、日本海軍などの大口径砲と比較すると、アイオワなどの写真をご覧になるとお判りのように、派手な赤々とした砲口炎となるのはこのためです。 

     この辺のことを理解するには、次のサイトの中の「砲内諸現象概要」の記事がご参考になると思います。

    http://navgunschl.sakura.ne.jp/koudou/riron/shokyu/dandou/dandou_frame.html

    (注):「筒圧」の「筒」は正しくは「月」偏に「唐」です。 フォントがありませんので代用しています。
    艦船ファン

  11. >10
     日本の大口径砲の鮮明な写真が残ってないのであまり知られてませんが、日本でも50口径等の長砲身ですと燃焼終了点が砲口近辺場合によっては砲口外になる例があります。例えば重巡洋艦の50口径20糎砲の場合は実測で砲口外5.51口径です(2号20糎ですと砲口内2口径でしたが)
     また日露戦争時の装甲巡洋艦の45口径20糎は昭和になるころは装薬種を50口径のものと同じにしたため、燃焼終了点は砲口外30.15口径となっちゃってます。つまり、必ずしも砲身が長いから後まで続くわけではなく、装薬の緩燃度が度を越していた場合でも起きます。
     日本の50口径20糎砲がギリギリまで燃焼を続けるのは#10で述べられてる理屈どおりのことをやった結果です。また15.5糎砲は最大とう圧を高めたことも合ってか砲口内で燃焼が終了するようになってます。ここらは夜戦適用等もあるんではないかと想像します。
    SUDO

  12. >11.
    >必ずしも砲身が長いから後まで続くわけではなく、
     それは砲身長と要求初速、そのための速度曲線に関係して筒圧曲線をどのようにするか、そのためにどのような装薬を使うかの問題であって、その砲毎の考え方ですから当然のことです。 したがって、日本海軍でも全てが砲内完全燃焼でなくても別に不思議でも何でもありません。

    >50口径20糎砲の場合は実測で砲口外5.51口径です(2号20糎ですと砲口内2口径でしたが)
      両者の完全燃焼点(X1)の公式データは、
        50/20  70C2  外1.5
               60DC  外5.2
               53DC  内14.6
        20II   70C2  内4.7
               60DC  外1.3
               53DC  内17.1
    で薬種によって異なりますね。 もちろん、薬量も異なりますが。 中小口径砲では砲種と薬種によっては他にもX1点が砲口外になるものもあります。

     ちなみに、大口径砲の場合は、弾種・薬種の違いがあっても、40糎砲は内18.4〜19.6、36糎砲は内15.1〜23.5で、全て砲内ですね。

    >燃焼終了点は砲口外30.15口径となっちゃってます
     正確な公式データは、
              70C2  外28.9
              60DC  外34.5
              53DC  内2.4
     ですね。 こんな古い艦、古い砲ですから、別にそれ専用のものわざわざ新たに用意しなくとも、流用でなんら問題ないでしょう。 別に話題にするようなものでもあませんので。

    >ここらは夜戦適用等もあるんではないかと想像します。
     何か根拠があってのご想像でしょうか? もしそのようなものがありましたら、是非ともご教示ください。 勉強させていただきます。
    艦船ファン

  13. >12
     根拠というほどでは有りませんが、かなり手前で燃焼を終えていること(ご自身で述べられてるように砲口まで燃やしたほうがとう圧や砲身重量面で有利なはずです)そして昭和二桁になると中口径用に消焔装薬であるFDが登場すること(制式は2式ですが)
    SUDO

  14. >13.
     ご存じとは思いますが、砲内で装薬が燃焼を終えたとしても、燃焼ガスそのものは砲口を出て拡散・冷却されるまで高温高圧であり、燃焼ガス成分には未酸化物も含まれます。 したがって、砲口を出るときに閃光(1次炎)と後炎(2次炎)を発し、これは夜間では相当な明るさとなりますから、夜戦うんうんはどちらにしても同じことです。
     しかも、完全燃焼点が砲口外にあるといっても、装薬が砲口外で燃えるわけではありませんので。

    >消焔装薬であるFDが登場すること
     消炎剤入りの装薬は、燃焼ガスの未酸化物成分に対するものであって、完全燃焼点の問題とは全く関係ありません。 しかもこれを使ったからと言って一次炎や二次炎が完全に解消されるわけではありません。

    >(ご自身で述べられてるように砲口まで燃やしたほうがとう圧や砲身重量面で有利なはずです)
     夜戦うんぬんとは全く関係ありませんが。
    艦船ファン

  15. >14
     ではお尋ねします。
     なんで後まで燃やしたほうが有利なのに、60口径15.5糎、または試作55口径20糎等は、手前側で燃焼を終えているのでしょうか。
     50口径20糎砲という実例がある以上、出来ないわけでも知らないわけでもないのに。また50口径12.7糎も50口径20糎とほぼ同時期やや遅れて登場する砲ですが、これも砲口手前20口径ぐらいで燃焼を終えています。
     なんで日本の長砲身砲は20糎砲以外は手前側にそろえてるのでしょう。そしてFD装薬を提供されるのが20糎砲なんでしょう(他砲に提供しているという話は私は知りません。もしかしたら他砲にも用意されたのでしょうか)
     もちろん手前で終えたって火炎がゼロになるわけではないし、FD使ったって完全に消えるわけではありませんが、普通の装薬で砲口近辺まで燃やすよりはマシなのでは?(全然関係ないというのなら勿論私が全面的に間違ってますので、ぜひともご高察と解説をお願いします)
    SUDO

  16. >15.
    >なんで後まで燃やしたほうが有利なのに
     それが砲にとっての有利の全てではありませんから、個々の砲の設計上の考え方によるだけのことです。 何度も申し上げますが。

    >なんで日本の長砲身砲は20糎砲以外は手前側にそろえてるのでしょう
     20糎砲だけではなく、例えば50/14も50/10HAもそうですが?

     それに40〜45口径砲であっても、砲種・薬種によっては完全燃焼点が砲口外になるものもあります。 45/15、40/15、45/12HA、40/8HA等々。

    >普通の装薬で砲口近辺まで燃やすよりはマシなのでは?
     なにが“どの程度”マシなのでしょうか? そしてそれは装薬というもの全体の問題についてどれだけ影響するのでしょうか? また既に生産、配布済みの厖大な在庫をどうするのでしょうか? それに2式火薬の消炎剤では2次炎はある程度押さえることができますが、1次炎はできませんが。

    >他砲に提供しているという話は私は知りません。
     2式火薬は中口径砲以下用として開発されたもので、別に15.5糎砲用専用ではありません。 実際に砲熕実験部史料では12〜15糎砲用と記述されているものもありますので。 それに上記の既生産・配布済みのものとの兼ね合いもあるでしょうから。 実際にこの2式火薬がどれだけ生産され、どの砲種・弾種用にどれだけ製造されたのかは、私も知りません。 今まで調べたことも、調べる必要もなかったので。 もしこれの明細をご存じでしたら、是非ともご教示いただきたいです。

     それで、本来の射弾精度の問題の続きはどうなったのでしょうか?
    >6.
    >徹甲弾よりも軽い榴弾の場合で置きやすいであろう事も想像できます。
     だそうですが、それに対して >7. でご説明いたしましたが、ご理解いただけたのでしょうか、それともまだ“想像”の続きがおありでしょうか?
    艦船ファン

  17. >16
     2式は実態が良く判らないのですね。ありがとうございます。
     では、なんで、20糎では砲口近辺まで燃焼させていたのに、その後の世代では燃焼を手前側にしたのでしょうか。色々な要因とはどのようなものがあるのでしょうか、教えていただけるとありがたいです。
     また手元にある50口径14は37DCで-14.93口径となっており、ばらつきは多少あるにせよ、砲口の手前度では15.5と同じぐらいではないでしょうか。50口径10HAは確かにステキに外側ですが。
     また45口径15糎は50C2です。適切な細さが作れないC2であることを思えば、装薬製造技術的にそうならざるを得なかったのではないでしょうか。旧式火砲ですから45口径20糎と同様に問題視するほどのことでもなかったのでしょう。在庫のあるC2のままとして適切なDCを回すほどではなかったのかもしれません。
     45口径12HAは後にわざわざDC4が準備されてますよね。装薬を調整しなおしたわけですから、場合によっては昭和初期の状況は改善が求められる何かがあったのかもしれません。それが何なのか私には判別しかねますが、できればこれにも解説していただけるとありがたいです。

     また、想像も何も、装薬がばらつけば、軽量な弾で影響が大きいことは当然では? それとも重たいほうがばらつきの影響は大きいのでしょうか?
    SUDO

  18. >17.
    >なんで、20糎では砲口近辺まで燃焼させていたのに、その後の世代では燃焼を手前側にした
     それは個々の砲の造砲上の技術史料を漁らないと判らないのでは。 もちろん残されているとしてですが。 逆にお調べいただいて、ご教示いただけると嬉しいですね。

    >50口径14は37DCで-14.93口径となっており
     実験部史料によれば
        50C2   外14.7
        40C2   内21.4
        37DC   内15.0
     ですね。

    >45口径15糎は50C2です。
     当該砲は同じ50C2を使っても、砲の型によって砲内弾道は異なってきます。 完全燃焼点で言うなら、
         VI、\、Xが薬量12.000kgで   外15.9
         V、VII、[が薬量13.600kgで   内5.1
     です。 この違いは主として薬室サイズ・形状の違いなどから来ています。

    >装薬を調整しなおしたわけですから、
     4式火薬は、昭和19年に開発されたものですから、調整し直すのではなく、新たに製造したということですね。 順次より高性能なものを新たに開発し、実用化していくことは別に不思議ではありませんし、それは何も不具合があったからにはなりませんが。 当然、製造も要求度の高い砲からになるでしょうし。

    >装薬がばらつけば、軽量な弾で影響が大きい
     装薬のバラツキの話しではなくて、砲口から出た燃焼ガスの影響の話しでしょ?
    艦船ファン

  19. >18
     資料から探そうにも素養が無いもので、理屈を教えていただけませんか?
     あと、12HA用はDC3のほうで、DC3は従来DCが細い2mm級の生産時に事故が多かったことへ対処したものだと日本海軍火薬史にありました。
     DCは21というスペックが40口径12.7HAにありますが、これがDCの限界の数値だったようです。これを生産しやすくしたものがDC3だとするならば、12HAではなく12.7HA用なのかもしれませんが。

     またばらつきは間違いですね「経年劣化によって燃焼速度が変化したら」です。
    SUDO

  20. >19.
    >理屈を
     図さえUPできないところでダラダラ書いても仕方ありませんから、まずは一般の方々が現在最も手に入りやすい『火器弾薬技術ハンドブック』(防衛システム研究会編、防衛技術協会、平成8年)当たりをお読みになられたらいかがでしょう。 この第1編第1章で「砲内弾道」、第4章で「過渡弾道」が、そして第3編第2章4で「火砲設計及び理論」が図表入りで解説されていますから。 その後は更に個々の専門文献に進まれればよろしいかと。

    >DCの限界の数値だったようです。
     製造上の話しで、使用上のことではないですね。 45/12HAでも50/10HAでも30DCですから、40/12.7HAでの21DC使用はどこかで何かの理由があったんでしょうね。 ただDC3はDC1、DC2が細径火薬製造に向かないために小口径砲用として開発されたとされていますので、必ずしも12.7HA専用ということではないのでは? 後は開発・製造時期の遅さからして、取り敢えず何に使われたかと言うことで。

    >「経年劣化によって燃焼速度が変化したら」です。
    >6.で
    >燃焼が均一に遅くとも外乱は均一ではないし、砲弾はあまり多方向から押されることを想定した構造でも無いでしょうから精度は低下します。
    >そしてこれは徹甲弾よりも軽い榴弾の場合で置きやすいであろう事も想像できます。
     と仰っているわけですから、これは“経年変化”のとことではないのでは?

     何れにしましても、既にそれら全てについてお答えしておりますので、元々のQ&Aであった装薬に関わる「射弾精度」の件についてのご説明は終わりとさせていただきます。

     もちろん、「射弾精度」に関するご説明で誤りがありましたら、ご指摘・ご教示いただけるならば幸いですが。
    艦船ファン

  21. >20
     その書籍は勿論有しております。その上で判らないので教えを請うている次第であります。私のつたない理解力をお察しください。
     またDC3で3mm級を作ったのならば、12.7HA専用ではないでしょうけど、DC3は押し出し工程がDCとは異なるのですから、別の機械を用いた別ライン製造です。需要が逼迫していたであろう21DC相当以外の径を(従来DCで作れるのに)わざわざ作るのでしょうか。
     またDC3はトリルセントラリットを2%使うのが特徴ですが、これを納入していたのは保土ヶ谷化学鶴見工場の年60tしかありません。つまり完全な歩留まり100%でも年300トンしかDC3は製造できません。鶴見からですから納入は平塚の第二海軍火薬廠でしょう。ここの製造実績は砲火薬だけで3000tです。他の火薬工場や歩留まりを考えたらDC3は装薬全体の10%に満たない量しか作られていないでしょう。12.7HA以外の砲に回せる余力はあるのでしょうか?
    SUDO

  22. 最大とう圧に達するまでの時間をMk6ではt1、Mk7ではt2とします。実際にはばらつきがあるため、それぞれt1±SD1、t2±SD2となります。両者とも薬種SPDで形状の変更によりt2>t1を実現しているわけですが、このような場合、一般的にはSD2>SD1になると考えられます、すなわち、遅燃装薬は本質的にばらつきが大きくなる可能性が高いです。

    また、経年変化ですが、これは不純物量が増えるわけですから、爆発エネルギーの低下とともに、燃焼速度の低下が想像されます。すなわち、SDはさらに大きくなります。

    このあたりが、「正規の装薬の燃焼速度が遅いことが影響して、榴弾射撃時の精度が低下する」原因とは考えられないでしょうか。

    もっとも、物を作る側にとってはこのようなことは自明なので、Mk7用装薬の場合はより高度の品質管理を行い、SD1=SD2にしていた可能性もありますが。

    くさの

  23. >22.
    >「正規の装薬の燃焼速度が遅いことが影響して、榴弾射撃時の精度が低下する」
     既にご説明いたしましたが、正規の装薬を使用しての射弾散布、これは装薬に関すること以外の原因よるものも全て含まれた総合の誤差ですが、は射表編纂時に既に考慮に入っており、単砲における平均射弾誤差と散布界の表が示されております。

     例えば、Mk7で2700ポンドAP弾と1900ポンドHC弾について、その表に記載されている一例では、
     仰角30度で、それぞれ規定の条件で発射した場合、
       AP  4弾で 初速 2475ft/s、 射距離 36,539yds、  平均誤差 ±105yds、 散布界 371yds
       HC  3弾で 初速 2626±1ft/s、 射距離 35,258yds、 平均誤差 80yds、 散布界 226yds
     というデータが示されています。
     そしてこの表の他の仰角で見る限りでも、HC弾がAP弾に対してそれ程悪いわけではありません。

     また、Mk6では仰角40度のデータですが、
       AP  5弾で 初速 2244yds、 射距離 34,921、 平均誤差 ±163yds、 散布界 437yds
     であって、弾数の違いを考慮してもMK7に比べて良好なわけでもありません。

     正しく製造され、正しく管理された装薬を使用すれば、この射表を使用して射撃した時はこのデータとそれ程大きな射弾誤差とはならないのが普通です。

     ですから、
    >遅燃装薬は本質的にばらつきが大きくなる可能性が高い
     ということも、軽いHC弾だから、ということも否定されています。 少なくとも、米海軍においては全く出てきません。

     逆に、もしその様な本質的なことが存在するとするならば、そのことが説明された弾道学なり、造砲論なりの文献を見てみたいものです。

     したがって、もし実際の射撃において射表と大きく異なった射弾誤差が問題となる時には、これは単に装薬だけではなく、砲身、砲架・砲塔、射撃指揮装置、これらのAlignment等々に起因する様々な原因・要因が考えられます。 特に、1門で射撃した時よりも、複数門で斉射した場合の散布界の射弾精度が問題となる時には、更に複雑になります。

     もし原因が装薬にあるとすると、その管理・使用状況から始まって逆に辿っていけばこれは比較的簡単に判ります。

     もし装薬の問題でないとすると、残りはどれを取っても簡単な問題ではありませんで、それらを一つ一つ潰していく必要があります。 状況によっては複数の原因が相互に関連している場合もあるからです。 そしてもし現用射表が疑われるなら、再度射場において徹底したテストが行われ、新しい射表が作成・配布されることになるでしょう。
    艦船ファン

  24. >21.
    >その書籍は勿論有しております。
     う〜ん、困りましたね。 文章でダラダラ書いてもとてもご納得いただけるようなものにはならないでしょうし、ここはQ&Aコーナーですから。 それに当該書より判りやすい一般刊行物にどの様なものがあるのか知りませんので。 もしご必要なら、当該書の執筆者の方々や、あるいは先にご紹介したサイトなどにお尋ねになってみてはいかがでしょうか?
    艦船ファン

  25. 原理から物を考える人間と、現実には問題ないのだから問題ないという考えと、なんか論点が微妙にずれているような気がする。


    ど素人

  26. >25.
    >論点が微妙にずれている
     この場合“ずれている”とは言いません、論点が違う、もっとハッキリ言えば間違えているということです。

     想像上の話しで、“0”かそうでないかをここで論じても何の意味もありません。 射弾精度という問題については、その影響が実際に有意な値として得られるか、現実にそれを指摘できるか、ですから。

     試験射場においてでさえ、砲身振動やその他の原因による誤差の中に埋もれてしまって、その影響を個別に取り出せない、その影響があるのかどうかさえ判らない事項を“こうでは”と主張して何か意味がありますか?

     したがって、もし仮に緩燃性火薬が原因による射弾のバラツキが“0”でないとしても、他の原因による影響の方が遥かに大きい中にあって、それを現実の値として示せない以上、そしてそれを理論として証明できない以上、それは射弾精度としては“影響がない”と言うことです。

     “原理から物を考える”のは結構ですし、確かに新砲の開発においては射弾精度も最初はそこから分析が始まるのですが、既にそれが終了して“問題はない”“有意差として証明できない(出てこない)”と結論付けられている問題、いや問題にさえされていない事項についてここで持ち出して、これによる射弾精度うんぬんと言われても、それは本来の論点としては間違っていると言わざるを得ないでしょう。

     その様なことはご説明してきた中で当然ご理解いただけると思っておりましたが ・・・・

     もちろん私も弾道学や造砲の専門家ではありませんから、どこかで証明され、データもあることなのかもしれませんが、もしそうなら逆に是非ともそれをご教示願いたいと思っています。
    艦船ファン

  27. 私は、3で大塚様が述べておられる、「正規の装薬の燃焼速度が遅いことが影響して、榴弾射撃時の精度が低下する」という問題解決のために供給された、とされていますので」の可能性として「SDが大きくなるのではないか」と問題提起したわけです。残念ながら私はこの手のデータを有していませんので、このSDが実質上無視できるか否かは存じません。

    艦船ファンさんが提示された試験結果は3発とか4発であり(当然コスト的に大規模な実験は難しいのでしょうが)、一般的な工業製品のテスト数と比べると、相当に少ないです。AP弾の4発平均36,539yds、平均誤差±105yds(SDにすると210yds)から逆算すると、その95%信頼区間は上限が36873yds、下限が36204でその差は668ydsになります。こんな数字で本当に良いのかな?という気もします。そもそも、平均誤差は試射数を増やせば小さくなるものなので、射撃の精度を議論するのはあまり適切な指標とはいえません。もし105ydsが標準偏差なら、95%信頼区間の差は330yds程度になるので、まあ許容範囲かなと感じますけど。

    いずれにせよ「正規の装薬の燃焼速度が遅いことが影響して、榴弾射撃時の精度が低下する」との記述がある基となったデータそのものを見ない限り、それが正しいのか、あるいは翻訳や文献編集上での間違い、または米軍の勘違い、かは分からないと思います。他の実験結果や理論をもってきても傍証に過ぎませんので。

    くさの

  28. >27.
    >こんな数字で本当に良いのかな?
     必要充分なものであるならばそれでよいということでは? 難しいとかと言うよりは必要がなければやりませんから。 そして一般的な工業製品うんぬんは、その成績が必要だからやるだけのことで、当たり前の話しで、それを持ち出しても意味はありませんね。

     実際の射撃における射弾精度の問題は、既に申し上げているとおり、元々の装薬の規格に関わるものだけではなく、というよりそれ以外の要因の方が多く、かつ大きいわけですから。 そして実際に、製造や管理などの理由でない限り、それらの要因に埋もれてしまうようなことは問題にもされないので。

    >基となったデータそのものを見ない限り、それが正しいのか、あるいは翻訳や文献編集上での間違い、または米軍の勘違い、かは分からないと思います。
     それを言い出せば、最初にその様なことを言い出すこと、そしてそれに説明を加えること自体が無意味ということになりますが? そして同じように、貴殿の問題提起でさえ、それを説明する実際の弾道学上の理論とデータの提示がなければ無意味ということですね。
    艦船ファン


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