238 艦隊司令部要員は定員約100名であり、高雄型はその司令部要員を収容するために艦橋を巨大化したといわれています。
しかし、艦隊旗艦に足柄や5500トン型軽巡が任務に就くことがあります。
この場合、全員が乗船していたのでしょうか?もしくは一部が乗船し、残りは陸上勤務とかになっていたのでしょうか?

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  1. >高雄型はその司令部要員を収容するために艦橋を巨大化したといわれています。

    福井静夫著『福井静夫著作集第四巻 日本巡洋艦物語』には、高雄型に関して「膨大な艦橋構造物のなかには、各種の休憩室(航海長私室をふくむ)が設けられた。これらは、平時の艦隊の訓練において、多数の便乗者や司令部付関係者を収容するのに、じつに便利であった。」(161P)とありますが、艦橋が巨大化した経緯について「高雄型の艦橋は、青葉型、妙高型の艦隊における数年の実績で、当時すばらしいいきおいで発達中の、わが砲、水雷、光学、航海、電気、無線、各種の兵装と、各専門の用兵者たちが、かくしたいという強い要求を続出させ、………数次にわたる研究をひらいた」「数ヵ月にわたり議論が続出して、たがいにゆずらず、けっきょくできるだけ各要求を満足させようということになり、努力してまとめたものであった。」(164P)と記述されています。
    つまり福井氏の記述に依拠する限り、当時旗艦施設の充実ということは考慮されたでしょうが、「司令部要員を収容するために」だけが艦橋を巨大化させた理由ではありません。

    >艦隊旗艦に足柄や5500トン型軽巡が任務に就くことがあります。この場合、全員が乗船していたのでしょうか?もしくは一部が乗船し、残りは陸上勤務とかになっていたのでしょうか。

    「聯合艦隊、艦隊、戦隊司令部定員表」は、聯合艦隊司令部も艦隊司令部も同じ定員で艦隊別に細かく規定されていません。しかし艦隊といっても第一艦隊、第二艦隊、第三艦隊(空母艦隊)のように大兵力を擁する決戦艦隊もあれば、第四艦隊、第五艦隊、南遣艦隊のような小兵力の防備艦隊的なものもあります。また中には陸上に置かれた艦隊司令部もあります。
    実際の人事配置は必ずしも定員表どおりではなく、それぞれの実情に応じたものになります。艦隊司令部の戦時日誌を見ると人数が分かりますが、一部しか残っていません。とりあえず、2つの司令部の例を挙げてみました。
    第一機動艦隊司令部 
    長官、幕僚15、司令部附准士官以上27、下士官兵その他244(軍楽隊32名を含む)(19年10月現在)
    第五艦隊司令部
    長官、幕僚10、司令部附准士官以上25、下士官兵その他96(20年1月現在)
    これらの司令部職員(幕僚、司令部附)のうち大部分が旗艦に乗組み、一部が乗艦指定、承命服務などにより他の艦船部隊で勤務します。
    艦橋の大きさは、旗艦になる条件としては必ずしも関係ありません。もし関係あるのであれば、例えば第一機動艦隊(第三艦隊)司令部は、戦艦、重巡に比べて艦橋の小さい空母を旗艦とすることはできなかったでしょう。

    おせっかい焼き

  2. おせっかい焼き様、ありがとうございました。
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  3. 旧海軍の軍艦(駆逐艦も含めて)には元々の設計で原則として司令部設備が盛り込まれています。 戦艦には艦隊司令部、航空母艦、巡洋艦には戦隊司令部、駆逐艦には隊司令部用が標準です。

    また居住関係だけでいうなら、元々の建造時から計画の個艦定員+司令部分にプラスαが盛り込まれています。 加えて、実際の乗組も特に平時ですと完全に100%ということはありませんし、教育入校、病気その他で席はあるものの不在の者もそれなりにいます。 また、士官などの便乗・臨時乗艦者が多ければ、場合によっては病室なども使います。 次室士官クラスの士官及び下士官兵でしたら通路などにハンモックを吊ればそれで済むことです。

    したがって、建造時の計画数や定員表で示される人数よりはかなり多くの者を収容することが可能です。

    また、その時の状況により司令部の下士官兵を旗艦指定艦に全部収容できない場合には、他の艦に分散することになりますが、それによる不足分の業務は個艦の乗員が分担しますので、全く問題はありません。 (司令部全員が乗ったとしても、旗艦乗員が司令部業務を補佐、分担することは当然で日常のことです。)

    司令部としての機能(勤務場所)の問題ですが、これも司令部全員が艦橋又はその付近に詰めるわけではなく、それぞれの職務に応じた艦内個々の場所に配置されますから、基本的には問題はありません。

    (したがって、艦艇設計において司令部設備のために艦橋構造物が巨大化するなど全く根拠のないことです。)

    最も問題となるのは通信関係だけでしょう。 個艦には元々予備電信・電話室がありますので、これらをフル活用することになりますが、それでも機器の絶対数が不足する時には他艦に分散することになります。

    これを要するに、例えば元々が戦隊司令部設備しかない巡洋艦が艦隊旗艦となったとしても、通信機能関係で多少不都合がでる場合もあるでしょうが、それ以外については、人が増えて狭くなって不自由ということはあっても、司令部として艦隊指揮ができないということはありません。

    年度演習時の検閲官付の配乗、回航時の便乗者、教育乗艦実習、一般市民の体験航海などなど、艦内設備の柔軟対応・柔軟運用は常日頃から慣れていますし、ましてや戦時なら多少の不便など全くの無問題といえます。 海軍艦艇というのはそういうものです。
    艦船ファン

  4. 艦船ファン様、重ねてのご説明、ありがとうございました。
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