273  英和辞典を引くと、"straddle" と "bracket" の両方に「挟叉」という訳語が当ててあります。
 しかし、検索してみると確かに straddle は「挟叉」を指しているのがわかりますが、bracket の指す内容はどうもそうではないようです。

引用:
"In an example used at 1911 Long Course on gunnery at HMS Exellent, the gunnery school, the first salvo was over, so the gunner ordered 400 yds down for the second salvo of the initial bracket." (N Friedman & A D Baker "Naval Firepower: Battleship Guns and Gunnery in the Dreadnought Era" p69)

 bracket にはどういう訳語を当てるのが適切でしょうか?
大名死亡

  1. 旧海軍の砲術用語でいえば「捕捉」ですね。
    艦船ファン

  2. リーダース英和ですと、「《砲から標的までの正確な距離を測るための》夾叉射撃一発分; 夾叉距離.」となっております。

    カンタニャック

  3. ちょっと捕捉、いや補足を。
    引用頁の左段中程、「The control officer was ・・・」の文をご理解いただけば、この専門用語の「捕捉」という意味がお判りいただけるのではないでしょうか? 実際にはちょっと細かい話しがありますが。
    艦船ファン

  4. 艦船に関しては全くの素人で申し訳ないのですが。英文から受けたイメージについて述べさせていただきます。

    bracketを辞書で引くとカッコという意味も載っています。カウンタブル名詞です。片方だけのカッコはbracketで、両方のカッコだとbracketsです。つまり
    (  :bracket
    ( ):brackets
    です。

    the gunner ordered 400 yds down : the gunnerは400 yds downを命じた
    for the second salvo       : the second salvoに対して
    of the initial bracket      : 最初の(片方の)カッコから (から=手前に)

    the initial bracketはthe first salvoのことです。

    ofをbefore的な意味にとらえたら良いのではと思います。「the gunnerは、the second salvoに対して、the initial bracket( = first salvo)から手前に、400 yds downを命じた。」とイメージしたらよろしいかと思います。

    この文では、first salvoとsecond salvoとをカッコの片側にみたてて、単数のbracketと表記しているのだとおもいます。first salvoとsecond salvoとで敵艦を(カッコで)囲むことが、軍事用語のbracketの意味だと思います。

    「the gunnerは、the second salvoに対して、the initial bracket( = first salvo)から手前に、400 yds downを命じた。」
    を専門的に訳したら「the gunnerは、400 yds downの捕捉を命じた。」となるということなんでしょうか。

    艦船ファンさんが引用しておられる「引用頁の左段中程」を読んでなくって、通りすがり的にカキコして失礼致しました。

    ちょん太

  5. of the initial bracket.の次の文がThe second salvo was short: the target had been bracketed.ですから、遠近あいまって初めて捕捉したってコトではないでしょうか
    駄レス国務長官

  6. >4.
    早い話というか、元々の語源はまさにそのとおりです。 要するに“( )でくくる”という意味です。 もちろんこの場合は「カッコ」ではなくて「斉射弾(の弾着)」ですが。 したがって bracket を動詞として使う場合には、“(連続する2つの斉射弾によって目標を)捕捉する”ことと言います。

    なお、本質問で出てくる射弾修正の方法(正確には試射の要領)を一般的に“bracket and halving method”と言います。

    艦船ファン

  7. 丁寧な回答ありがとうございます。上にあげた引用とそれに続く部分を訳せば、こうなるでしょうか。

    原文:
    In an example used at 1911 Long Course on gunnery at HMS Exellent, the gunnery school, the first salvo was over, so the gunner ordered 400 yds down for the second salvo of the initial bracket. The second salvo was short: the target had been bracketed. Now the gunner halved his correction, so the third salvo was 200 yards up. If it was still short, it placed the target in a bracket 200 yards wide. The next correction, assuming the target was within a 200-yard bracket, was another 150 yards up. That placed the target within a 150-yard width of a single salvo, which should mean straddle.

    訳文:
    1911年に軍艦エクセレント号(砲術学校)の講義に用いられた例を示す。最初の斉射が遠となった場合、砲手は最初の捕捉を狙う第二斉射に対し400ヤード下げを命ずる。第二斉射は近であった。目標は捕捉されたことになる。次いで砲手は修正量を半分にし、従って第三斉射は200ヤード上げになる。もしこれが依然として近なら、目標は200ヤードの幅に捕捉されたことになる。次の修正は、目標が200ヤードの幅に捕捉されていることに鑑みて、150ヤード上げとなった。これによって目標は一斉射の幅である150ヤードの範囲に捕捉されたことになり、おそらく夾叉を得ることであろう。
    大名死亡

  8. >7.
     翻訳文という前提であるならば、大変僭越ながら私個人の所見としては宜しいかと存じます。

     後はどれだけ専門的な表現にするかということになりますが、そうすると逆に一般の人には判りにくくなってくることも確かです。

     ご参考までに、多少ともそれらしい表現にするなら、次の様な言い方もあります。

    「砲手」 → 「射撃指揮官」(あるいは「砲術長」でも可)
    「遠」「近」 → 「全遠」「全近」
    「第二斉射に対し」 → 「第二斉射で(は)」
    「上げ」 → 「高め」
    「200ヤードの幅」 → 「200ヤードの幅内」
    「150ヤード上げとなった」 → 「更に150ヤード高めとした。」
    「目標は一斉射の幅である150ヤードの幅に捕捉された」 → 「目標は一斉射の散布界である150ヤード幅内に存在する」

     なお、日本語の場合は旧海軍の文章でも、「斉射が遠となった」などは「斉射の弾着が全遠となった」、あるいは「斉射弾が全遠となった」などと書かれるのが一般的です。

     また、原文は「wide」「width」ですが、砲術の場合日本語で単に「幅」というと横(左右)方向のことになりますので、例文のような場合「(射)距離差」あるいは「照尺差」と言うのが普通です。

     まあこれらは対象の読者をどう設定するかによりますし、英語そのままを重視するか日本語としての専門性をとるかにもよるでしょう。

     ただ、この文、これだけを一般の方が素直にそのまま読まれると「?」と思われる部分があると思います。 それが先に申し上げた「ちょっと細かい話しがありますが」ということになります。

     例えば、何故捕捉後の折半修正で隙間ができないように初めの修正量を400ヤードでなくて300ヤードにしないのか? とか、射距離差200ヤード内に目標を捕捉したならその修正は150ヤードではなくて100ヤードでは? とかです。 これが一般に言われる所謂 「公算射法」 の実際のややこしいところですね。

    艦船ファン

  9.  添削まことにありがとうございます。もしよろしければ「細かい話」までうかがいたいのですが。
     それともウェブサイトの方に詳細をお書きでしょうか。もしそうならリンク先を教えていただければ幸いです。
    大名死亡

  10. >9.
    ここで当方がご説明するよりは、次のサイトをご覧いただくのがよろしいと思います。 もっとも同サイトの内容は専門的すぎるところが無きにしもあらずですが。

     『海軍砲術学校』 : http://navgunschl.sakura.ne.jp/

    このサイトの『砲術講堂』の中に『射法理論』の項があります。 ここに『射法の要素』と『水上射撃の射法』が解説されています。 後者はまだ試射のところまでですが、本項のご質問の内容に関しては十分でしょう。

     『射法の要素』 : http://navgunschl.sakura.ne.jp/koudou/ijn/shahou/riron/youso/youso_frame.html
     『水上射撃の射法』 : http://navgunschl.sakura.ne.jp/koudou/ijn/shahou/riron/surf/surf_frame.html

    もっとも、同サイトの説明は旧海軍の砲術についてで、欧米諸海軍はここまで緻密なことはやっておりませんで、ざっと流し読みされるだけでもよろしいかと。

    艦船ファン


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