387 98式10cm高角砲は命数が少なくて〜という話はよく聞きますが
同じような性能(ですよね?)のドイツのSK/C33 10.5cm/L65は
http://www.navweaps.com
によると2950発らしいです。
300発とか400発といわれる98式と比べるとあまりの差に日本の冶金技術は〜とかいう話の前に、ドイツと日本で命数に対する考え方の差とか基準に差があるような気がするのですが、ここまで命数に差がある理由は何なのでしょう?
wood

  1. 誰もお答えにならないので、艦載砲は専門外ですが一般銃砲の知識範囲で回答します。

    結論から申せば この98式10cm高角砲の砲身寿命(BARRE LIFE)400発は桁違いではなく概ね妥当のものと考えます。

    銃砲に於いて、初速−砲身長−腔圧 は相関のものでありますが、この98式10cm高角砲は
    初速1000m 腔圧3000KG/CM^2 と当時の砲の中でも群を抜いてハイプレッシャーです。
    圧3000を超えるとエロージョン(焼損)は激しくなり砲身寿命は著しく低下します。1000発以下になります。
    近口径、初速&腔圧 共 同レベルの独艦載砲 8.8 cm/75 SK C/25 や8.8 cm/78 (3.46") SK C/31 等
    長砲身砲にても ご紹介のHPによれば砲身寿命は600発となっております。

    さて、現代に於いては同口径、同性能の砲と言えば戦車砲(TANK GUN)であります。
    西側の代表的戦車砲である、施条砲 M3,M36系90mm砲(M47,M48,61式車載)、 L7系105mm砲(第二世代MBT)
    これらも同じく初速1000m 腔圧3000KG/CM^2(L7で3600以上)を超えるものですが、同様に砲身寿命は、
    M3,M36系90mm 800発位、L7系105mm砲500〜600発と数百発レベルであります。
    更に高初速 高腔圧のラインメタル120mm滑腔砲にては500発以下とされています。

    まとめ、 
    冶金学が発達している今日でさえ 初速1000m 腔圧3000KG/CM^2 を超える砲の砲身寿命は数百発であります。
    98式10cm高角砲の砲身寿命400発(やや少なめですが)は、当時の日本の技術では概ね的を得ている値です。

    軌跡の発動機?誉

  2. たしかにSK/C33 10.5cm/L65は初速900m/s腔圧2850kg/cm^2とあります。
    ということは腔圧3000kg/cm^2をさかいに命数は急激に悪くなるのが一般的という認識でいいのでしょうか。

    しかしながら
    8.8 cm/78 SK C/31 初速950m/s 腔圧3100kg/cm^2 命数約1500発
    8.8 cm/76 SK C/32 初速950m/s 腔圧3150kg/cm^2 命数3200発
    12.8cm/61 KM 40 初速900m/s 腔圧2950kg/cm^2 命数約1500発
    というデータもあるのですが…(ドイツの砲ばかりなのは他意ありません。というより他国の砲でこのレベルの長砲身砲が探せなかったので
    最後はともかく上の2つは腔圧3000kg/cm^2オーバーで命数も1000発単位です。



    wood

  3.  ドイツの高初速砲は長砲身ですから、瞬間的な大圧力で弾丸を押さず、初期の火薬燃焼が比較的緩やかなのではないでしょうか。
     当時の命数を決めるのは施条開始地点の局所的焼損で、これは導環が施条に食い込んで砲身を密閉するまでの間隙を燃焼ガスが抜けようとすることで発生します。
     弾と砲身の間隙に突っ込もうとする先走った燃焼ガスを減らせれば、焼損は劇的に減少するかと。
    SUDO

  4. >1. 8.8 cm/78 (3.46”) SK C/31 ・・・・今見直ししたら、例に示したこれは誤記でありました。

    大砲屋さんにとって、経験上 初速1000m/sを実現するには、発射薬量はその弾丸重量の50%程の量が必要。
    と言われています。
    ご紹介のHPで 色々な砲のスペックを見ますと初速1000m/sを超える物とそうでない物とでは、
    同等弾丸重量でも確かに発射薬量に明らかな差があります。ほぼ50%説の通り。
    然るに発射薬重量/弾丸重量 比がエロージョン(焼損)促進に関係してくるものと思います。

    〜?誉

  5. 軌跡の発動機?誉様
    まとめると砲口初速や腔圧、装薬量(これらはもちろん相関していますが)にはここを超えると命数がいっきに悪化するという閾値的なものがあり、その寸前でとどまったドイツの砲と踏み越えていった98式という感じでしょうか。

    SUDO様
    >弾と砲身の間隙に突っ込もうとする先走った燃焼ガスを減らせれば、焼損は劇的に減少するかと。
    この手のノウハウがドイツにはあって日本にはなかった、あるいは98式では考慮しなかった。ということになるのでしょうか。どうも私にはパリ砲やら列車砲のこともあって「ドイツは高初速長砲身の本場!」みたいな認識(偏見?)があるので。
    wood

  6. >5
     この焼損の理屈は日本の文献によるものですので、基本的なことは日本側でも押さえてます。
     ただ、比較的緩やかに燃えるドイツ系DT火薬で各種試験を行った事例では、同じ初速ならより多くの装薬を必要とする場合があること、緩やかに燃える大きな火薬は燃焼が不安定な場合があること、砲口焔が外から観測されやすいこと等の問題点が大正時代の試験結果に記されてます。
     この試験は既存火砲で行ったものですので、火薬に合わせた薬室を用意することで改善できる余地もあるのかもしれませんが、高角砲は日本軍の大好きな夜戦では重要火力の一つですから、夜戦適合性を考えると自ずから出来る範囲というのが狭められるのかもしれません。
    SUDO


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