395 帆船時代の戦列艦の速度性能についてお尋ねします。
例えば同じ80門艦でも、国や時代、2層艦か3層艦かで船の大きさが違いますよね。これらで速度性能がどのように違ってくるのか知りたいんです。

(例1)イギリスの小さな80門艦と、フランスの大きな80門艦ではどちらが優速か
(例2)イギリスの2層80門艦と、同じくイギリスの3層80門艦、100門艦で速度性能に違いはあるか

なんとなく、より小さなフリゲートは戦列艦より優速な感じがするから、同じ戦列艦でも小さい方が優速な気もします。しかし戦列艦というくらいだから船の大きさによらず速度性能は同じようなもののような気もします。

蒸気艦時代は新しい船のほうがより速く設計されているように思います。一方で帆船時代は同クラスでも新しい船のほうが大型化する傾向があるようで、速度性能が悪化したのかなと疑問に思い質問する次第です。
設計思想、史実、参考文献、何でも結構です。
よろしくお願いします。
太助

  1. 関連する過去の質問が以下にあります。最後に言及されているレースはスポンサーが変わったので、現在は別の名前になっています。
    http://www.warbirds.jp/ansq/2/B2000290.html

    19世紀のティーレースは高値で売れる紅茶の一番荷を運ぶ帆船競争でしたが、そのための造船上のポイントは「細長いこと」であったようです。そういえば「日本の重巡洋艦は速度を稼ぐために細長い設計にしたので、海外の同規模の艦より魚雷に弱くなった」という主張がありましたね。

     じゃあ戦列艦はフリゲートより細いのか太いのかとなると、古い戦列艦のデッキを1枚はがしてフリゲートとして使った例などもあるので、一概には言えません。この場合は、マストも船体のラインズも同じで軽くなるんですから、同じ風を受ければ速く走るはずですけどね。

     Wikipediaの「カティーサーク」の項によると、細長くした帆船は港内でのわずかな位置修正が難しくなるのだそうで、とくに大型艦になれば速度重視で細長くするわけにはいかなかっただろうな、という程度の想像はできますね。



    マイソフ

  2. 回答ありがとうございます。

    同時代のイギリス戦列艦の甲板長÷全幅を比較すると、
    60門艦>80門艦>100門艦
    の順で艦が小さいほど細長くなっているのが分かります。ただし、全長や垂船間長ではなく甲板長を用いていることや、甲板長÷全幅の値の違いが僅かであることから、同じ3層艦ならば80門艦と100門艦は相似形であるようにも思えます。

    相似形ならば、フルード数を同じとして縮尺模型の要領で何か計算できそうな感じもしますが、80門艦と100門艦で同じ風速を受けているところにひと工夫いるかな?とも考えています。もっとも、これでは80門艦と100門艦で速度性能に差があることが前提となってしまうから、思考方法として本末転倒のような気もしますが。

    戦列を組む艦として、諸艦の速度性能は揃っているほうがいいとは思います。しかし、乗り手の技量で速度も変わってくるであろう帆船であるが故に、艦自体の性能はあまり問題にはされなかったんでしょうか。


    考えがまとまらずに書き込みすると、本当に文章が乱れますね。
    駄文失礼しました。




    太助

  3. それは当然問題であったと思います。ただ例えば日本海海戦における第3艦隊のように、戦列艦を呼び集めるような決戦時には旧式艦を遊ばせるわけにはいかず、「そんなことより大事なことがある」のだと思います。
    マイソフ

  4. 乱文で真意が伝わらなかったですね。
    「小型の80門艦は大型の100門艦に合わせて速度性能を落として設計されているのかな」
    「時代と共に艦が大型化しているが、新型艦ほど速度性能は悪くなるのかな」
    というのが疑問点なんですよ。

    これに対して、
    「80門艦は100門艦より快速だが、開戦では100門艦に合わせて速度を落とす」
    もしくは
    「80門艦も100門艦と同等の速度性能で設計されている」
    「新型艦は旧型艦に比べて細長く設計されており、速度性能で同等以上」
    「新型艦は旧型艦に比べて帆が大きく設計されており、速度性能で同等以上」
    「いやいや新型艦は旧型艦よりも速度をだすのが難しかったんだよ」
    というような話が聞きたかったんです。

    上にあげた話の例は「大型=鈍足」というイメージで書いており、「大型=快速」となる性質というか設計思想があれば、話はまた変わってきますが。
    「大型=新型=快速」であれば、コスト面以外はいいことずくめに見えますから、艦型が大型化していった理由も納得できますね。
    太助

  5. 帆船に対して大した知識があるわけではないのですが、
     純粋に論理的に考えると、船が大きくなると排水量は三乗で増えるが、帆の面積は二乗でしか増えないという、二乗三乗則が効いてくる筈です。相似形の80門艦と100門艦を比較するなら、同じ風を受けた場合に80門艦の方が推力/重量比で有利である筈だといえるとは思います。他方強風下で安定した航行をおこなうには大型船の方が有利となる場合もあるでしょう(荒天時の航行あるは砲戦では、砲甲板が高い方が有利です)。
     戦列艦についていえば、最高速度はあまり問題にならなかったのではないでしょうか。戦列を組めるだけの速度と運動性があれば、あとは火力と防御力の強化に努力が注がれたように見えます。(そのために19世紀には鈍重な戦列艦よりフリゲートが重視されるようになり、最終的には蒸気艦に置き換えられていくわけですが。)
     速度(最高速度というより同じ風で相手艦より速く自由に動けるか)が重視されたのは、海賊船や密輸船あるいは奴隷貿易船などを補足する必要があるフリーゲート以下の艦ではないでしょうか。(もっともこれも米英戦争などでフリゲート同士が単艦で戦うとやはり大型フリゲートが有利なので、マイソフさんが上で述べられたように小型戦列艦の甲板を引っぺがしたりするのですが。)

    カンタニャック

  6. 回答ありがとうございます。
    戦列艦は速度はあまり問題としなかったと読まれましたか。確かにそうかもしれませんね。小生もなんとなくそのような気もしますが、何かこの考え方が近代の戦艦みたいで気持ち悪くもあります。ちょっと誤解を招く表現でしたが、戦艦の時代を(実体験にしろ記録にしろ)知っている世代だからこそ、戦列艦→主力艦、戦艦→主力艦、だから戦列艦≒戦艦、という発想になっていないかという疑念が拭えないというか…うまく言えませんが。

    ところで回答中に二乗三乗則とありますが、それは速度にも効いてくるのでしょうか。なんとなく加速度に関係するような気がしますが。最終的に抵抗と帆力が釣り合ったときの速度がどうなるか。抵抗が船の水中断面積に比例し、帆力が帆の面積に比例するとすると、船のサイズによらず帆船の速度は同じになるような気もするし、ならないような気もするし。イメージだと確かに大型になるほど鈍足なんですけどね(笑)

    p.s. 実際は抵抗は船の下(船体部分)にかかり、帆力は船の上(帆部分)にかかるわけですから、同形状でサイズを変えると船が前のめりになってしまう可能性が考えられますね。

    太助

  7. ああ、シロートはだめです。
    造波抵抗は面積比例ですね。二乗三乗則の話はあわてて撤回します。
    ごめんなさい。

    すると、同じ戦列艦でも大型艦の方が取り回しが難しいという話は、舵の効きや帆装の扱いの問題なのかなあと、シロートは疑問が募るばかりです。
    カンタニャック

  8. シロートだから楽しいんじゃないですか!気楽にアサーティブに知識を深められるといいですね。

    ところで理屈から考えて、帆船の速度がサイズに依存しないかもしれないという仮説が正しいとすると、大型艦→鈍足というイメージも戦艦→鈍足というイメージに影響を受けていた可能性がありますよね。同様に、戦列艦の設計思想のイメージが後世の戦艦の設計思想の影響を受けていないか気になるところです。カンタニャックさんの仰るとおり、砲力、防御力に重点をおいて、速力は二の次だと小生も思うのですがどうにも確信がもてない。戦艦は主戦場に到達するには速度が遅すぎたんじゃないかと小生は思っているんですが、戦列艦はとりあえず主戦場で頑張っていたみたいですし。巡洋戦艦の存在のせいかもしれませんが。

    まったく楽しいんですが、疑問はつのるばかりです(笑)

    太助

  9. 性懲りもなく書き込みますが、終末速度は同じでも、そこまで到達する時間や、進路の変更にかかる時間では、大型艦の方が不利なはずではないでしょうか(逆に一定のコースを維持するなら大型艦の方が有利でしょうが)。つまり鈍足ではないにしても鈍重であり、風向や風力の変化が大きい場合や作戦的な機動が必要な場合には、結果的に大型艦の方が鈍足になるように思えます。
    カンタニャック

  10. もちろんそうなりますよ。
    それこそがカンタニャックさんふうにいえば二乗三乗則に従うはずですし、小生ふうにいえば加速度になるわけですね。

    ちょっと筆を置きます。

    太助

  11. 加速性が二乗三乗則で大型艦ほど悪化するのは確かだと思います。運動性も大型艦の方が不利だとイメージします。
    ただ運動性や風状が大きく変化する場合(沿岸部でしょうか?)での運用がどれほど重視されていたのかわかりません。
    というのは、戦列艦の多くは帆装がシップ型であったようですが、これは風状が安定している場合に優れた性能をだす帆装のようだからです。(←イメージで語っているので誤りであれば訂正をお願いします。)
    一方でバーク型と呼ばれる縦帆を装備する船もあります。

    つまり、風向によらずに速度を出せる機動性や運動性を重視したのならば、シップ型ではなくてバーク型が採用されたようにも思うのです。たぶん戦列艦があった時代にも縦帆は存在したと思いますので。

    以下は何かの参考になるかもしれないリンクです。
    小生のように艦の大小による相対的性能や設計思想に興味をもった場合のほかに、>>1のリンク先のように速度性能に興味がある場合にも参考になるかと思います。

    ポーラー曲線
    http://d-s-t.jp/maritime/manual/004_sailing_theory/003.pdf

    太助

  12. >6 自己レス訂正

    誤)水中断面積
    正)水中表面積

    ですよね。話の方向性には影響ないとはいえ、何を書いているんだか(苦笑)

    太助

  13. ん〜、船体形状が同じで船体が大きく(長く)なると、
    ・レイノルズ数が大きくなる→摩擦抵抗係数は減少方向
    ・フルード数が小さくなる→造波抵抗係数は減少方向
    どちらも船体の抵抗係数は(一般的には)減少する方向ですよね。それでは大型帆船の方が快速ということになりますが、、、あってるかな?

    太助


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