712 第二次大戦時の各国の潜水艦の真水の造水設備なんですが、
水の製造量は各国の潜水艦それぞれどれくらいの量を作れるんでしょうか?

日本の潜水艦は造水能力が低いといわれますけど
具体的な造水量を比較したデータなど無いものでしょうか?



おでんくん

  1.  わたしからも、ぜひお願いします。米潜がシャワーを設置、使用していることが許せんというか、気になっておりました。
     わが潜水艦もインド洋辺りではシャワー使ってましたよね。
    浮上時間が短いから造水できないのでしょうか。伊400級には、シャワー設備はないのでしょうか?
    4式射撃装置

  2. 大戦期の潜水艦には、烹水や洗面などの生活用水の真水に加えて、大量の鉛蓄電池用の高純度精製水が、水上艦艇よりも大量に必要でした。それぞれ二種類のタンクが装備されていましたが、米海軍では、電池用の精製水タンクは半分以上残すことになっていました。

    米海軍の艦隊型潜水艦を例に上げますと、1200ガロンの電池用精製水タンクと4400ガロンの真水タンクが設置されていました。通常のパトロールでは、週に500ガロンの電池用精製水と、3500ガロンの生活用真水が必要でした。

    1916年に最初に採用された排気熱利用造水機は、高速水上航行時でなければフルに働けませんので、1937〜1940年に電動の蒸気圧縮型造水機が開発され、最初にSS-125に2器搭載されたModel-S型の造水能力は750ガロン/日でした。1943年からは1000ガロン/日のMode-Xに改装されています。それ以降、X-1からAAA-1へと改良され、戦後まで使われています。

    鉛蓄電池用高度精製水は、造水機を二度通して純度を高めていましたので、その分の造水能力は割引してください。もちろん空調器から得れる「露」も、余すところなく利用されていましたが、造水機と異なり、得られる水量は大きく変化する上、酷い臭いがしました。
    佐久間多聞

  3. 日本の潜水艦については、資料を持っておりませんが、ドイツのIIV型のUボートでは、機関室に設置された小さな造水機から得られる真水の大部分は、124基装備した、熱ですぐに蒸発する鉛蓄電池に供給されていました。多目に見積もっても、造水能力は100ガロン/日を下回っていたでしょう。

    それに対して、バラオ級では最低でも600ガロン/日以上の真水がシャワーなどに消費されていましたので、「贅沢」だとうらやましがられていました。

    熱帯も航行した帝国海軍の潜水艦の造水能力について、ご存じの方がおられましたら、是非ともご教授ください。蓄電池の性能は別にして、より寒い海域にいたUボートに比較して、蓄電池の精製水の必要量は、かなり多かったのではないかと想像しております。
    佐久間多聞

  4. 米海軍では、エアコンや除湿器を工夫して、天井から垂れ落ちてくる水滴を防止しながら、できるだけ多量の真水(主に行水や洗濯用)を得ていましたが、エアコンの無い他国の潜水艦では、水滴だらけの高温多湿環境に耐えなければならない上に、二種類しかない真水造水法の一つも失っていることになります。

    また、シュノーケルが採用されるまでは、電動の造水機も夜間水上航行中でしか運用できません。蒸留器はとても熱くて、真水を無駄にしたクルーが罰直として操作させられました。造水機の担当者は、1パトロールで15ポンドも体重が減ったそうです。
    佐久間多聞

  5. ⬆多湿になって、水滴まみれの劣悪な環境になるのは、一般的に深い海中ほど水温が低下しますので、潜航中に艦内空気中の水蒸気が、冷えた壁面などに触れて凝縮するからです。「高温」多湿環境と記載しましたが、水面と水中の温度差が大きければ、海水温度の低い高緯度の海域の方が、凝縮による艦内環境の悪化は強く、除湿器による造水効率も高まります。⬆を訂正させてください。赤道を越えるのも、大変だったでしょうが、アリューシャンへも辛かったと思います。クルーは勿論ですが、電池が良く持ったな〜と感心しています。
    佐久間多聞

  6. 佐久間多聞様 非常に丁寧な解説ありがとうございます。

    大戦のころはイオン交換膜などまだ存在してないと思うんで
    おそらく海水を蒸留して真水を精製しているのかと思っていたんですが、それ以外にも空調 除湿器も利用していたんですね。

    >多湿になって、水滴まみれの劣悪な環境になるのは、一般的に深い海中ほど水温が低下しますので、潜航中に艦内空気中の水蒸気が、冷えた壁面などに触れて凝縮するからです。

    潜水艦内部でも結露が発生するんですね
    潜水艦内部は多湿な環境とは聞いたことありましたけど 結露が原因でしたか
    非常にためになりました。
    回答ありがとうございます。


    おでんくん

  7. 佐久間様 造水能力の数値までありがとうございました。蓄電池用の精製水がそんなに要るとは知りませんでした。
    次の2点をお尋ねしたいです。
    >バラオ級では最低でも・・・うらやましがられていました。
    これはUボートのクルーが羨ましがるのですか? どうしてシャワーの存在を知ったのでしょう。
    >エアコンの無い他国の潜水艦
    我が潜水艦のほうが装備は先なのではありませんか。




    4式射撃装置

  8. >7 4式射撃装置さま、レスを有り難うございました。

    ペルシャ湾の軍艦旗で詳述されたように、掃海艇はもちろんのこと、現代の掃海母艦や補給艦ですら、清潔な飲料水を自給する能力はないようです。ネットに(軍用)潜水艦用の造水機の広告が載っている今でも、CVNやSSBNや豪華客船のように、自由に安全な飲料水を使えれば、船乗り全てから羨ましがられるのではないでしょうか?小生が参考にした複数の資料には、誰からとは明記されていませんでした。どうぞ、ご自由にご想像下さい。

    エアコンについては、どこの潜水艦とは明記されていませんでしたが、多分Uボートだと思います。当時潜水艦を運用していた国は、日独以外にも、英国やソ連など幾つか有りました。申し訳ございませんが、各国多種時代ごとの潜水艦の、エアコンや除湿器の有無やその能力については、全く資料を持っておりません。ご存じでしたら、ぜひご教授頂ければ幸いです。
    佐久間多聞

  9.  本題とはまったく関係ございませんが、
    「ダイキン工業50年史」ダイキン工業株式会社
     昭和49年10月25日発行 (何故か所持しています。)
    に潜水艦の冷房設備の記述がございます。
     潜水艦では糧食庫冷蔵、居住区冷房、製氷機、弾火薬庫冷却とあり
    該当艦として、伊27潜、伊177潜、呂41潜、呂101潜の名前があります。また、「回天」の操縦室の冷房としてマルロク金物用スポットクーラの記述があります。


  10. 生産技術協会『機関計画内規』34〜35頁より

    旧海軍における洋上艦艇における造水装置の造水量については以下の式で定義していたと書いてあります。

    Q(トン/日)=aE+bN。

    1)Eはボイラ全力時の蒸発量。
    2)Nは定員数・
    3)aは艦種ならびに主機別の係数。
      ・タービンを主機とする場合,戦艦 0.02,巡洋艦・駆逐艦 0.01,水雷艇0.015,その他 0.02。
    4)bは主機別の消費水量で蒸気推進船の場合,0.12と定めており、内燃船においては 0.15とされたが、潜水艦は0.45を計上している。

    私も本自体は持っていなくてメモ書きとしてノートにあったものです。もしかしたら脱字等があるかもしれません。その場合はご容赦ください。また、これ以上の事は私も分かりません。ごめんなさい。

    実際にこの計算式通りに造れたのかまでは知る由もありませんが、ご参考になればと思います。

    Tokyo-Rose

  11. 結局は潜水艦は内燃ですから係数が分かりませんので、これでは数値はでてこないわけです。そもそもボイラの蒸発量も分からないというのもありますね。

    ただ、造水装置を導入するにあたり、しっかりとした計算式の上で選定を行っているということは分かるかと思います。

    私の県の図書館には機関計画内規がないため原著をあたれません。もしかしたら原著にはもっと詳しくあるのかもしれませんね。
    Tokyo-Rose

  12. >10, 11
    小生は蒸気機関について、全く知識がありませんので、わかりやすく教えてください。

    蒸発量って、なんのことでしょうか?蒸気機関車じゃあるまいし、蒸気漏れの多いスチーム・カタパルトなどが装備されていないのならば、艦船のボイラーからの水蒸気は、風呂焚きなどの極一部を除き、推進器でも烹水や暖房用でも、復水器で蒸留水にして、ほとんどが回収されているのではないのですか?係数aは回収できないで漏れてしまう蒸気の割合なのですか?蒸気漏れの割合が、艦種で定まる理由もわかりません。戦艦では、2%も水蒸気が漏れているのですか?蒸気機関で10万馬力を発生させるためのは、その何倍ものパワーの水蒸気を造らなくてはなりませんが、その2%が艦内で漏れたならば、艦内で凝縮する際に与える熱量はどのくらいになるのでしょうか?

    Nの定員数は、乗り組んでいるクルーの人数なのでしょうか?また係数bは、乗員一人一日当たりの造水量なのでしょうか?もしそうなら、潜水艦では一日に一人当たり、450リットル造水していたのでしょうか?米海軍バラオ級潜水艦の、最大一日に一人当たり約28リットルの造水能力と比べると、桁違いに多くなります。

    小生がトンでもない間違いをしているのだと思いますので、何卒ご教授の程をお願い申し上げます。
    佐久間多聞

  13. >12、ご迷惑をかけております。原著を持っている人がいたらと思い書き込みましたがいないようですね。後日、原著をあたったときに改めて本回答しますが、掲示板から落ちそうなので仮回答をしておきます。私の推察は以下のとおりです。

    1)おそらく、ここでいう蒸発量とは無くなってしまうという意味ではなく、どれくらい蒸発させる能力があるかというスチーム作成力ことでしょう。その作成した水蒸気の係数分を最低限はとりなさいということでしょうね。

    2)Nの定員数は乗り組んでいる人数をまともに入れるのではないと思っています。おそらく100人とかで括ると思いますね。ここは原著をあたってみます。
    Tokyo-Rose

  14. 原著にあたってきました。昭和6年に纏められ昭和17年に改定されていることが分かりました。残念ながら水上艦のみの資料しかありませんでした。


    潜水艦の造水装置の要領は「潜水艦艤装規定」に記載されているとのことです。


    残念ながら本書には具体的な数字はなく上記の規定参照となっています。公式が完全に違うものであると推察されます。残念ながら本規定を私は持ち合わせておりませんので、回答はここまでとなります。

    ここから先は前回質問への回答です。

    説明文に「ボイラ計画全力時の蒸気発生量ならびに定員の消費量を基準とし次式にいたる造水量を標準とする」とありますので、造水装置における造水量の作成基準といったところですね。

    ということで、蒸発量は蒸気発生量となります。その蒸発量から係数分の水を最低限取りなさいよということでしょう。
    Nの定員数は定員そのままでした。括りはありませんでしね。

    なお、ご質問の蒸気漏れですが、戦後に造船された艦船でも蒸気漏れは1.5〜3%ぐらいは発生しています。よって旧海軍の軍艦もそれぐらいの漏れがあってもおかしくないと思います。漏れというか敢えて漏らしている箇所もありますのでね。外気が入り込む方が厄介ですから。なお、ボイラの蒸発量が増えると漏れ分は少なくなっていく傾向があります。


    Tokyo-Rose

  15. 海大IV型の元乗組員の方のお話を伺いました。伊何号かは本人の意思により伏せさせていただきます。

    巡航時:6トン強/日
    全力時:9トン〜10トン弱/日

    はっきりとは覚えていないがこれぐらいがではないのかと回想しておりました。
    冷水域ではさらに効率が悪いとのことです。
    上記の数字は呉近辺のものなので効率はかなり良好だったとのことでした。
    巡潜型については残念ながら知らないとのことです。

    以上の報告を持ちましてクローズとしたいと思います。
    Tokyo-Rose

  16. アジ歴で、レファレンスコード C05021586800 に「甲種 戦闘運転報告(11)」が閲覧できます。昭和6年7月29日奄美大島西口沖での報告となり伊号第六十二潜水艦における造水装置の造水量が載っています。上記の回答とほぼ同じ数値が掲載されておりますので、元乗組員の方の証言は正しいと言えるでしょう。

    また、レファレンスコード C05022086300には電気式造水装置についても競技記載がありましたので、ご参考になるかと思います。
    Tokyo-Rose


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