727  衝角と突撃船首について質問です。

 古代からガレー船の主兵装だった衝角は中世終わりぐらいから廃れて突撃船首に代わっていきます。
 蒸気機関が採用されるようになると衝角が復活しますが突撃船首は廃れました。
 この理由は何でしょうか?

 前者の理由は・・・元々衝角は攻撃の際に損傷して攻撃側の船体にも水線下の被害を及ぼすことがあったが、船体が巨大化したことでそのリスクが看過できないものになっていった。このため代替攻撃手段として水線下に被害が及ぶ危険性の少ない突撃船首に取って代わられた・・・と想像しました。
 後者の理由は・・・蒸気機関とともに装甲艦も普及したので、突撃船首では装甲を施された水線上を攻撃することになるため、無装甲の水線下を攻撃する衝角と比べ攻撃する側のデメリットが大きくなってしまった。また、攻撃側より大きな(乾舷の高い)船体に対しては有効性が低いから・・・と想像しました。
おうる

  1. 下記Wiki中に「推進力を風に頼っている船では衝角戦術を取ることはできない。」とあります
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%86%E8%88%B9%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E6%B5%B7%E6%88%A6%E6%88%A6%E8%A1%93
    裏返せば「衝角戦術を取るには自前の推進力(人力にせよ機力にせよ)を持つ必要が有る」ってコトじゃないでしょうか
    駄レス国務長官

  2. レスありがとうございます。

    帆船についていえばそうなのですが、ガレオン船等大航海時代以降も一部で使われ続けた櫂船で衝角が廃止され、突撃船首に移行していった理由を知りたいのです。
    おうる

  3. 大航海時代の櫂漕船に衝角が無かったのは、当時の時代背景というか、風習を加味して考える必要はないですか?

    大航海時代は、船を「沈める」よりも「拿捕して持ち帰る」ことの方が多かったのです。
    船を沈めれば儲けはゼロですが、拿捕すれば積み荷と船という儲けが手に入ります。特に船は当時貴重品です(当時は船を作るのに必要な木材が欠乏しており、船材は貴重だったことも考慮に入れる必要があるでしょう)。
    だから沈めるための装備である衝角は必要ではなく、むしろ害悪でしかなかった、と考えることができるかと思いますが。

    なお「大航海時代は、船を「沈める」よりも「拿捕して持ち帰る」ことの方が多かった」というのには明確なソースはありませんが、過去ログの

    http://www.warbirds.jp/ansq/21/B2001141.html

    こちらのささきさんの書き込み「海賊というのは船を沈めるのが仕事ではなく、船や積み荷を奪って我が物とし売り飛ばす利益行為を生業とする」から読み取ることができるのではないでしょうか。

    大航海時代は、私掠船という名の「海賊」が横行していた時代ですので。
    Jack

  4. 3 > ガレーは、国や都市国家の戦争に用いられた小型かつ櫓で漕ぐ船です。略奪を目的とする海賊船と異なり、目的は第1に敵兵を殺し、その一手段として相手の船を沈めたりすることです。用いられなくなったのは、レパンテ沖海戦で大型のガリアスからの鉄砲に無力なのが判明したからです(世界の艦船等)。織田信長が同様の戦法で毛利の水軍に大勝したのは、宣教師にこのことを教えられたからだと思います。何故か、日本史ではレパンテ沖海戦への言及を見かけませんが。
    次に、蒸気機関と共に大砲も発達してきたため、突撃船首は不必要どころか、操船の手違いで近くの味方の船に衝突すると撃沈してしまうこととなり、かえって危険なものとなりました(伊藤正徳氏)。
    UK

  5. レスありがとうございます

    >>3
    >「沈める」よりも「拿捕して持ち帰る」
    それだと、衝角を廃止した理由にはなるかもしれませんが、衝角をやめて突撃船首(敵船を転覆させるための兵装)を採用した理由が説明できません。

    >>4
    >蒸気機関と共に大砲も発達してきたため、突撃船首は不必要どころか、操船の手違いで近くの味方の船に衝突すると撃沈してしまうこととなり、かえって危険なものとなりました(伊藤正徳氏)。

    これは衝角や突撃船首が廃止された理由は説明できますし、日露戦争後の衝角廃止の流れもそうだったので納得できるのですが、蒸気機関の採用とともに衝角が復活したのに突撃船首は復活しなかった理由が説明できません。
    突撃船首を持つガレアス船が作られる頃だと、前方に向けて巨砲を搭載するようにもなっているので、突撃船首と射界が被るといった問題があったとも思えません(そもそも前方砲は突撃船首で攻撃する際に敵兵を薙ぎ払うために使うらしいので、どちらかが邪魔になるというものではなかったと考えます)。
    おうる

  6.  ガレー船におけるRUMの衰退は色々あります。これといった決定打があるわけではなく、様々な要因が絡み合って廃れていきました。その要因は以下の通りと推察されます。

    1.まずは速度低下の問題ですね。RUMを装着しすると重量の他に抵抗力が増しますので速度が低下することとなります。速度の低下はガレー船の最大の武器である機動力の低下ということになりますので深刻な問題でした。15世紀に入りますと、火砲の搭載、漕ぎ手の不足、帆船の機動力向上等々、様々な問題から船速の維持が問題となってきました。そのため速度低下の要因であるRUMは邪魔になっていったのです。つまり、15世紀はRUM装着による速度低下を看過出来ない諸事情がたくさん発生してしまったということですね。

    2.おうるさんのご推察のとおりです。RUMを用いた戦法はリスクが高い戦法であり、RUMの欠損などは良く起きることでした。大型の帆船、大型ガレー船が相手では衝撃の大きさも無視が出来ないものとなりました。それを防ぐためには、RUMを頑丈にするしかありませんが、それを行うと速度が落ち機動力が失われRUM戦術が使えないという、自己矛盾に陥ることになったのです。

    つまり、1と2はガレー船の特徴である機動力が損なわれるという問題が起きてしまったということですね。機動力を失ったガレー船では、移乗による白兵戦も仕掛けることが出来ませんし、それでは戦力にならないわけですから…

    3.帆船は突撃船首で突撃した方が効率的となった。ようは帆で風を受ける帆船やは風下では横転しやすくなります。そのため突撃船首で横腹を風上から押すことによって横転させるか横転近くまで体勢を崩すことが出来るようになったのです。

    4.また、その突撃した状態から船首の大砲を撃つことにより斬り込みのための道筋も出来るようになりました。地中海の女王たるヴェチネア海軍のガレー船の船首に搭載された大砲は大小5門で全て船首に向けての固定です。そして、大砲を撃つタイミングは突撃船首が敵にぶつかってからとされていました。そこからも移乗攻撃へ移行する目的が分かるかと思います。

    3と4はガレー船のもう一つの特徴である移乗攻撃による白兵戦をいかに生かしていくかということになりますね。

    5.壊れた場合も船首の方が交換がまだ容易です。そして、戦闘中に壊れても活動に支障をきたす可能性は船首のほうが低いというのもありますね。


    その後、帆船のさらなる性能向上が進むとともにガレー船は廃れました。帆船の機動力はガレー船を上回ることになったからです。戦列艦を始めとする帆船軍艦時代の到来ですね。

    帆船時代は並列して大砲を打ち合うことがメインとなりましたので、突撃船首を搭載しない船も多くなりました。中にはありましたが、それは美観またはもしものときのための保険程度だったのです。

    が、帆船時代もRUMの必要性を求める声は消えることはありませんでした。やはり接近戦での打撃力は捨てがたいものがあったのです。船用の大砲はまだ人員殺傷や船の一部を撃破するのが主であり撃沈するまでの威力を持っていなかったことも大きかったと言えます。撃ち合いも接近戦となることも良くありまして、そういった場合にやっぱりRUMがあればなと思うところはあったのだと思います。

     そこに蒸気機関の登場し、漕ぎ手ではない推進力が確保されると一気にRUM戦の復活の兆しが出てきます。そして、装甲艦の登場はさらに大砲の威力不足を痛感することになりました。そこで喫水線下に打撃を与えるRUMが復活してくるのです。なぜ、突撃船首ではなくRUMなのかは、おうるさんの考察のとおりの理由ですね。そして、何よりも撃沈が目的になりますので喫水線下の船腹を狙いたいのは当然のこととも言えます。また、船の重心が帆船よりも低くなりましたので、突撃船首で押しても敵艦が横転をさせにくくなったというのも理由の一つといえるでしょう。

    そして、リッサ島海戦で装甲艦がRUMによって沈められたという事実は「装甲艦の弱点はRUMにあり!」と誤って認識され、RUM復活を告げる本格的な狼煙となったといえるのです。

    その後は黄海海戦などで、大砲の威力も上がり、船の機動性もさらに増し、RUM戦が出来るほど近づけないわよね。と、悪夢から醒めたかの様に気づいてしまい、廃れていったのはご承知の通りかと思います。

    Tokyo-Rose

  7. あれ? 角ではなく酒になっていますね(汗)

    Rum→Ramの間違いです。読み替えてくださいませ(笑)
    女々しく言い訳をいたしますと、夜中の投稿であったのと大航海時代のRum酒の効用について色々とやり取りをしておりましたので変換ミスりましたのよね。

    お詫びに補足を入れておきますわね。おうるさんはご存知かとは思いますが…掲示板ということもあるために知らない人のために…

    ガレー船時代の衝角戦術を行うには以下の条件が必要です。
    1.自前で推進力を持つこと
    2.機動性が高いこと
    3.移乗攻撃のための白兵戦戦力があること

    この3つに適したのガレー船(ガレー)となります。それしか無かったということでもありますが…つまり、Ramが消えたのはこの3つの条件に対して不都合がでたということになりますので、その観点からお調べいただくと、ご自分の納得いく答えがでるかと思いますわね。
    Tokyo-Rose

  8. >>6-7
    回答ありがとうございます。
    納得がいきました。
    おうる


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