744 日本海軍の着艦手順につき、教えてください(乾先生に尋ねる勇気がないもので)。

戦闘機など偵察員が搭乗していない場合、

1、艦尾を越えた(艦尾がかわった)と判断するのは、パイロット自身なのですか?それとも、米海軍のLSOのように、母艦から指示がでるのでしょうか?
2、着陸をやり直す判断も、パイロットに任されているのでしょうか?たぶん着艦時のパイロットは、アドレナリン出まくりの、自信満々の状態だと思うのですが(それでなければ、着艦などできない?)、冷静な偵察員がいない場合は、母艦からパイロットに着陸復航の指示がでるのでしょうか?
3、戦闘機も、艦尾がかわったら、米海軍機のようにスロットルを一杯に絞る(カット)のでしょうか?それとも、アングルド・デッキでの着艦のように、スロットルをそのままにして、着陸指示灯に従って直線的にタッチダウンするのでしょうか?
4、ウェーブ・オフやカット以外にも、米海軍ではLSOの責任で、フラップや脚がおりているかや、フックがおりているかなどを確認して、異常があればパイロットに指示していると思います。日本海軍機の着艦時には、機体の異常などを母艦からパイロットに伝えていたのでしょうか?伝えるのなら、誰がどうやってかを教えてください。母艦から指示するのは、LSOみたいにパイロットの方でしょうか?
佐久間多聞

  1. 着艦をやり直させる判断は母艦側発着艦指揮所で行い、赤旗を振って着艦機の操縦員にこれを伝えられます。
    この合図を逓伝すして飛行甲板艦尾でも赤旗が振られます。


  2. 片さま、早速のご丁寧なレスをありがとうございました。
    もう少し教えてください。

    1)戦闘機以外にも、偵察員が負傷したり、搭乗員が気づかない機体の損傷があれば、同じように母艦からの指示で着陸をやり直すのですよね。

    2)母艦からの着陸やり直しの指示は、母艦には伝わっていない理由などで、パイロットが無視して強行着艦が許されるのことがあるのでしょうか?風雨に考えると、米海軍のLSOの指示と同様、着陸復航の指示は絶対的な命令などでしょうか?

    3)戦闘機のパイロットには、母艦からスロットルを絞る(カット)指示もでるのでしょうか?

    日本海軍の艦上機の着陸手順について、具体的に詳しく解説した資料が見当たらず、悩んでいます。私の想像が違っていた、ご指摘をお願い致します。
    佐久間

  3. 1)については艦戦だけでなく、ほかの機種でも旗は振られます。
    「脚が出てない」などという故障やミスに対して旗が振られたり、「お前じゃなくて燃料残額がほとんどなくなった艦爆を先に降ろすからあとにしろ」と着艦管制を行いつつ行われます。
    2)したがって、旗による信号は絶対的な命令となります。こうしたことは飛行長の指揮下で行われます。着艦復航だけでなく、着艦を後回しにされたために着水を余儀なくされることもあります。
    3)については搭乗員の判断になるのではないでしょうか。


  4. 手記を読む限りでは、「艦尾かわった」は、主翼の下を艦尾(飛行甲板末端の縞模様)が過ぎた瞬間を搭乗員が認識して使う言葉のようですね。その瞬間スロットルを絞り(全閉)操縦棹を引くとあります。
    とおり

  5. 皆様、ご丁寧な解説をいただき、有り難うございました。

    源田実大佐など、米英海軍航空の着艦手順に詳しい参謀(?)達が、回収時間の短縮や、事故率の低下に苦心したと聞いております。LSOなしで、単座機のパイロットにも、「艦尾がかわった」と認識させるのには、特別の工夫が必要だったのではと思った次第です。

    米海軍が公表しているような、バリヤーに引っ掛かったり、ランプ・ストライクや、アイランドへの激突や、前方の駐機航空機への突っ込みなどの、帝国海軍艦上機の事故の写真を見たことがありません。情報公開基準の違いもあるでしょうが、やはり、当時の帝国海軍のパイロットは、とてつもなく高い技量を誇っていたのだと、改めて感服しております。
    佐久間

  6. 確かに帝国海軍の事故の写真というものを見たような記憶がないですが、それは事故が少なかったためではなく、事故の写真を撮らないか、あるいは撮っても公開など以ての外だったのかもしれません。

    たとえば着艦時の事故として、前にここでも出ましたが、マリアナ沖・大鳳艦上で天山がバリケードを超えて前方の駐機の群れに突っ込み、一面が炎上した事故があります。探せばいろいろ出てくると思います。
    とおり


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