777  第二次大戦中の米空母艦載機の誘導方式について。
 阿川弘之の小説『暗い波濤』の中に、昭和18年後半ころのラバウルで予備士官が、撃墜したアヴェンジャーの搭乗員達を拷問して米機動部隊の位置を吐かせようとする。ところが「ブカの東120浬だ」とかいい加減な位置しか言わない。もっと詳しい位置を知らなければ空母に帰れないはずだ、とさらに厳しい拷問を加える。あとになって「アメリカの艦載機はレーダーと無線電話で誘導してもらうから、搭乗員は空母の詳しい位置は知らなくてもいいんだ」と通訳から聞かされて呆然とした、というエピソードがあります。
 小説ですがこの誘導方式についての記述は妥当なものなのでしょうか?、というエピソードがあります。
 小説ですがこの誘導方式についての記述は妥当なものなのでしょうか?

バツ

  1.  後ろから2行目は入力間違い。
    バツ

  2. 米空母に限らず、当時の日本の艦載機にもクルシー航法装置を積んでいます。
    飛行高度によりますが、100浬程度は十分に受信可能なので、大体の位置が判れば十分帰投可能です。

    電波を出すと空母の位置がバレるという心配はあるし、空母の替わりに随伴する駆逐艦から電波を出す等の運用はあったかもしれませんが、空母の位置を正確に知る必要はありません。

    むしろ18年後半に電波誘導を知らない士官の方が「?」なので、(未読ですが)小説としては能力のある士官が払底しているという表現なのではないでしょうか。 でもそれだと18年後半じゃちょっと早いかな・・
    わんける

  3. このほか艦載機のほうが電波発信して、それを母艦側に探知してもらい、方位を教えてもらうという方法があります。

    また、1943年ですとアヴェンジャーはすでに全機にレーダーを標準装備しているので、自分のレーダーで母艦を探すこともできます。
    超音速

  4.  ありがとうございます。クルシー航法装置は名前くらいは知っていましたが、そんなに電波を出していいのか?、ひょっとしたら史実でも日米の運用に違いがあるのか?、という疑問でした。

    >能力のある士官が払底しているという表現
     これはなさそうです。作中の栗原少尉、飛行機を志願してしばらく九三中練に乗っていたけど、不適になって写真判定の教育を受けてラバウルに来ているという筋なので。

    >アヴェンジャーはすでに全機にレーダーを標準装備
     熱心な読者では無いので阿川先生がメカニックの方にどこまで興味があったかは知らないのですが、捕虜の乗機が艦戦でも急降下爆撃機でも大差なさそうです。横空の場面で「一式陸攻はプロペラに二枚羽根と四枚羽根のとがいた」(後者はまあOKか)、陸戦訓練の場面で「九四式の軽戦車」とか書いているので(あら捜しをして得意になっているわけではない)。

     他の著作に登場人物のモデルやエピソードの使い回しが出てくるので、取材した人がそう言っていたのかなあ、とも思いますが。さらに考察ありましたらお待ちしております。
    バツ

  5.  1943年も後半になるとアメリカ艦艇は無線封鎖を行っていないと思います。レーダーを常に使用して、警戒に当たっているからです。常に、レーダーから電波を出しているのなら、無電を封鎖する必要もないので、行っていないわけです。
     これに対し、日本海軍はレーダーよりも電波探信儀を中心に運用していましたので、基本は電波封鎖です。
     したがって、帰投に当たって、その栗原少尉の常識は、母艦の位置を正確に把握するということと、そこへ機体を導くとことということになります。中練で訓練中も、このことは重要事項として叩き込まれたはずです。
     アメリカの捕虜の話は、その常識を完全に覆す話なので、呆然としたということでありましょう。
     
    hush


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