951 お世話になります。
トリマラン船型についてです。

トリマランのメリットは広く知られてきていると思いますが、実際にトリマラン船型の民間船舶なり艦艇なりの建造ペースは遅々としたものという印象が強くあります。

LCSにしてもモノハル船型も平行して建造が続いておりますし、オーストラリアの新型OPVではモノハル型が採用されています。
各国海軍の新型艦艇計画をみても、トリマラン船型はほとんど見受けられません。

これは、トリマランのメリットはモノハル船型を駆逐する程のものではなかった、という評価が定まりつつあることを意味するのでしょうか?
またトリマランと比較してモノハルを採用するメリットはどのようなものがあるのでしょうか?
satoski

  1.  単胴型のフリーダムの価格が4650万ドルなのに対して、三胴型のインディペンデンスのそれは1.7倍の7880万ドルだそうです。これは、多胴型の船形が複雑であることに加えて、船体結合部に大きな力がかかるために、その部分の強靱化に金がかかるからです。
     一方、甲板面積は広いのですが、同一排水量での搭載量は、単胴型のほうが大きいことに加え、船幅が広いので、入渠可能な乾船渠も限られてきます。
     これらを勘案してみますと、現在の所、単胴型のほうに利が大きいようです。
     
    hush

  2. hush様

    ご回答ありがとうございます。

    価格についてはwikiでみて、確かに高いなと思ってはおりました。ただ、英語wikiのインディペンデンスのページでは、ネームシップが7億ドル、のちの艦(量産効果が出た後だと思います)で3.6億ドルとあったので、数さえ作れば克服できるのかなとも思っておりました。
    実際はなかなかそううまくもいかない、といったところなのでしょうか。

    >同一排水量での搭載量は、単胴型のほうが大きい
    興味深いお話です。
    これはどういったわけでこうなるのでしょうか?
    satoski

  3.  御免なさい、一桁間違っていたようです。
     多胴型の大きな利点は高速を発揮しやすいということですが、これは喫水部分の抵抗を減らすことによって成り立っています。しかし、それは、幅を小さくし喫水を浅くすることと同義ですので、船体内の体積を減らすことになります。このため、上部構造物に収納することが多くなるわけですが、船体結合部に負担をかけたくないので、あまり重量物を載せたくないということになります。
     以上が私の理解しているところですが、船舶工学の基本となる部分すら分かっておりませんので、大きな勘違いをしているかもしれません。
     
    hush

  4. hush様

    書き込みをなさった金額は日本語wikiの既述かと思いますが、その金額でググってみたところ、GlobalSecurity その他サイトでヒットしました。
    読んでみると、該当する金額は建造費ではなく、最終システムデザインに対する契約額のようですね。実際に当初想定されていた建造費は概ね4.4億ドルであるようです。
    (英語でしたので、誤読しているかもしれませんが……)

    >多胴型の大きな利点は高速を発揮しやすいということですが、これは喫水部分の抵抗を減らすことによって成り立っています。しかし、それは、幅を小さくし喫水を浅くすることと同義ですので、船体内の体積を減らすことになります。このため、上部構造物に収納することが多くなるわけですが、船体結合部に負担をかけたくないので、あまり重量物を載せたくないということになります。

    なるほど、確かに細長い船体になるわけですから、船体内部へ収められる物品の量は減りますよね。
    その分上部構造物へ、とした場合、トップヘビーになって復原性が低下するのはサイドハルの浮力でカバー出来るとして、重量物を支えなければならないクロスデッキ部分はより一層の強度が求められて、重量面でも価格面でも不利となる、というのは納得がいきます。

    広い甲板面積&抵抗の少なさというメリットと、重量やコストの上昇というデメリットを天秤にかけて、求めるところに合致すればトリマランという選択肢もあるということですね。
    satoski

  5.  多胴船なら無条件に抵抗が少ないというわけではありません。体積当たりの表面積は単胴船より多胴船の方が大きくなるので抵抗はむしろ大きくなる傾向にあります。
     多胴船の方が高速化にメリットがあるのは船体を極端に細長くできることと、ロール安定性を確保できることにあります。船体を細長くすれば高速化に有利になる代わりにロール安定性が失われますが、細長い船体を2つ以上横に並べて互いに支えあうことでロール安定性を補完できるわけです。ただし、船体を細長くしたことで生じるデメリットはローリングだけではありません。ヨーの安定性が高くなりすぎて船体規模に対して旋回性能が低下する点もデメリットではあるのですが、この点は多胴化しても解決しません。むしろ多胴化によって悪化します。

     また、積載量が減る点ですが、船体の構造に多くの重量が割かれてしまうのと、極端に船体を細長くした結果利用可能な船体内容積が減少してしまうのが理由です。
     大きな波を乗り越える時でも船体と船体をつなぐ上部構造物が水面に接触しないようにしようとすると、それなりに高い位置で繋げないといけないので外洋での航行を想定すればなおさら重量を無駄に食われることになります。
    おうる

  6. おうる様
    ご回答ありがとうございます。

    >ヨーの安定性が高くなりすぎて船体規模に対して旋回性能が低下する点もデメリット
    これは意外なデメリットでした。
    これを軽減しようとすれば、バウスラスターなり舵を多重にするなりと、さらにコストがかかりそうですね……。

    こうしてみると、トリマランは優れた点が色々ありますが、だからといって夢の船型とも言い切れないのだなと判ります。
    satoski


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