1081 江戸時代に発達した弁才船は、高い帆柱を持っていました。当初は一本物を利用していましたが、材料が得がたくなると、細い材料を集めて作るようになりました。このような物を松明帆柱と呼びます。広重の、名所江戸八景の「鉄炮洲稲荷橋湊神社」に描かれています。
 松明は、樹脂の多い松の根っこあたりを細かく割りまた束ねたものです。しかしwikiの、大阪市が復元した浪華丸についての記述は、厚板を4枚使い正方形断面図に仕立てたものを松明帆柱としていますが、間違いではないでしょうか。奈良東大寺大仏殿の主柱のようなものがむしろ松明に似ていると思うのです(船の箍の代わりに、太い釘を使っていますが)。
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  1. ttps://www.jstage.jst.go.jp/article/conf/22/0/22_31/_pdf/-char/en

    フランス人中尉の報告に基ずくそうですよ。
    タンジェント

  2.  もしかすると、角柱の帆柱が不審のもとではないかと思っておりますが、丸柱ではなく、角柱を使うのは和船の特徴です。
     というのは、木は先細りですので、元口ではなく、末口にあわせて角柱を製作します。丸柱は、この角柱の角を削って多面体にし、さらに磨いて仕上げます。縦挽きの鋸や台鉋がなかった時代には、楔で材を割って作っておりますので、余計に大変なわけです。
     また、丸柱のほうが強度が弱くなり、手間がかかりますので、使用される場所は、ほぼ寺社に局限されていました。特に神社の場合は、祠の外側の部分は角柱、内側は丸柱と截然と分かれています。これは、内側が神の領域、縁側部分はその覆いであるという考えからです。
     ですから、丸柱を強度の求められる帆柱に使うのは有利ではなく、神仏の領域を侵すことでもありますので、あまり和船の帆柱には使用しません。もっとも、船霊の設置場所は帆柱を入れる筒柱に入れることが多いので、神仏の領域と言えないこともないのですが、帆柱自体は甲板の外側にありますので、祠と同様に考えられたはずなのです。
     ですから、広重の絵を拝見して、こういうものもあるのだと思ったわけですが、和船の帆柱は角柱が普通です。実際、琵琶湖博物館に収められている丸子船の帆柱は角柱です。もしかすると、松明柱になって、角柱でなくてもよくなったのかもしれませんが、疑問には思っています。
     https://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2003/00932/contents/0021.htm
     こちらに「杉の芯(しん)材に四方より槍の打物を打ちつけて、責込(せめこみ)と呼ぶ帯金を巻いて作る松明(たいまつ)柱が一八世紀前期に考案された」という記述があります。「槍の打物」というのがよく分かりませんが、「四方より」とありますので、浪華丸の帆柱の形状は一般的な角柱であり、それにあわせて再現されたということになるのでしょう。
     なお、1で紹介されたアドレスそのままだと、私の場合、きちんと表示されませんでしたので、 復元された菱垣廻船「浪華丸」の意義について で検索されたほうがよろしいかと思いますが、そのフランス人中尉の計測したという1968年は1868年、つまり明治元年の間違いです。その頃は、弁財船も多く残っていたので、簡単に計測できたと思っています。
     あと、松明柱というのは、寄木で作られた形状が似ているからついた名称だと思いますので、円柱か角柱かは、あまり関係ないと思われます。
     
    hush

  3. >2
    フォロー感謝、私の所からはあのアドレスで直ぐだったので、申し訳ない(此処の慣習で、記入は頭のhを省いています)

    「打物」には、大工用語で「平板」の意味があります。従って角柱だったと思います。(が、古語・死語に近いのでしょう。むしろ金槌などを指す事が多い。名残として「厚板すのこ6枚打ち」なんて表現があります。)

    なお「松明柱」には、「柱松明」または「柱松」の連想から来ている可能性があるそうです。
    タンジェント

  4. >3
     御教示多謝。
     どちらかというと、打物よりも槍のほうが分からないのですが、檜あたりの誤記ではないかと疑っています。
     
    hush

  5. あらら、先入観で「檜の打物」と読んでいました。「ヤリ」なら、正に「打ち物」そのものですね。
    タンジェント

  6. 皆様 ご議論ありがとうございます。私は、責込の形は丸い輪と思っていましたが、複数部材を束ねたものであれば、四角いものでも、松明帆柱と呼んだのかも知れません。もう少し調べたいです。広重の絵では、丸いと思っていましたが、四角に見えないわけではないので、参考程度です。洋式船では、部材を組み合わせたマストは、made mast あるいは built(-up) mast と呼ぶようです。基本は円柱形ですが甲板を貫くところから下部は正方形のようです。甲板との貫通部の隙間にくさびを打ち込んで固着するためのようです。
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