40  先日、現代の日中戦争をあつかったシミュレーション小説を読みました。
 その内容は、アメリカ民主党の大統領が訪中している真っ最中に人民解放軍のクーデターが起き、中国の全権を掌握、台湾と日本の尖閣諸島に侵攻を開始する、というものです。
 訪中中のアメリカ大統領は、北京放送のテレビ会見でクーデター軍の支持を表明(!)し、台湾と尖閣は中国の“内政問題”であるから、アメリカ軍は紛争に一切介入しない、と断言してしまいます。

 これが本当に大統領の意志なのか、あるいは脅迫されて発言しているのか判らないわけですが、何と言っても大統領が死亡したり誘拐された訳ではないので、米軍は台湾軍や自衛隊を援護できなくなる……、というストーリーです。

 面白い設定だとは思うのですが、これって現実にはあり得ることなんでしょうか?

毛沢山

  1. あくまでも架空の設定であることを前提とした上で、何故、どのような思惑で米国が人民解放軍クーデターを支持するのか、それが最近の政治情勢から見てどの程度起こり得るものなのかが検討すべき課題なんでしょうねえ。
    米国が中国を英、独などNATO諸国並みに信頼できるパートナーと考えたからということなのか、
    そして中国を日本以上に密接な関係を有する同盟国とするからには、米国の国際戦略に中国を積極的に協力させようとする意図があるのか(例えば、ロシアへの対抗、あるいはイランなどアジア近辺における反米的勢力の封じ込め)、
    それが日本、韓国、更にASEAN諸国との関係悪化及びアジア地域での同盟関係の根本的変化によって生じるデメリット(インドと中国との核戦力競争の激化等)を考慮しても、米中双方にとってメリットがあるものなのか、
    こういったことが課題となるんでしょうねえ。ま、仮想小説ですから、原作者もほとんど考えていないんでしょうけど。

    アリエフ

  2. おそらく、ポイントはそこよりも(「米国」が支持するかといったらそれは当然支持しないでしょう)、
    「大統領が介入しないと言ったら米軍は何もできないのか、たとえそれが本来の条約や戦略に反している上に、紛争当事国に監禁?されている状態での発言でも」
    ということでは。

    直ちに大統領を帰国させよ、さもなくば(誘拐などと同様)執務不能状態とみなして発言は無効、権限継承順位に従って副大統領以下で然るべき処置を取る、と主張するのではないでしょうか。
    帰国させるが時間が、などとのらりくらりと言い逃れ、初動を遅れさせる効果は確かにありそうですが…
    (でも米国民が怒り狂うことを考えると結局損にはなりそうですね)
    みなみ

  3.  だいたいみなみさんのおっしゃる通りで、小説の中だと米政府の高官達は『後ろから銃か何かで脅迫されているのに違いない』と判断しているのですが、しかし一方では以前から親中的な発言の多かった大統領でもあるので『ひょっとしたら本心なのかも? 』という疑いも否定できないという描写です。
     それと中国のクーデター政権も好戦的で、紛争に介入する国が有れば核攻撃も辞さないと宣言しているため、むしろ大統領が捕らわれているのを良いことに、アメリカに戦火が及ぶことを避けようとする一派もいる……。
     
     たしかにこういう設定でもしないと、台湾や日本の有事に米軍が全く介入しない・介入できないという小説は書けないだろうなぁ、といささか感心した次第です。

     ただ、法理論的には無理があるんじゃないか、という気がします。

     問題は、『大統領はまだ生きており、自由意志で行動している(かのように見える)』ところでしょうね。
     外国に滞在しているとはいえ、大統領が『自分は誘拐されていない』と主張している以上、米軍の指揮権は引き続き大統領の下にあるのでしょうか?

    毛沢山

  4. >3 だからさ、そんな米軍指揮権だの法的な問題なんぞは完全無視、という前提での火葬小説なんでしょ。ご都合主義以外の何物でもない設定なんだからさ。
    ま、法的なことは抜きにして、米国政府、軍としての政策決定が行なわれたものとして考えるとしても、相当、無理があるんだけどね。
    アリエフ

  5. その小説が火葬なのかちゃんと可能性を追求しているのか、判断する術は当面無いわけですが、いずれにせよ質問は
    「これって現実にはあり得ることなんでしょうか?」
    なので、回答は火葬かどうか、政策決定としてあり得るか云々ではなく、上記のようなシチュエーションが現実に発生したらどうなるか、ということでないといけないのでは。

    むろん現実には「無理がある」(不穏な空気くらい中国当局もアメリカも少しは気づくだろうしその状況下で訪中はしないとかいろいろ)でしょうし、だからこそ「そんなことは現実的に考える必要がない」のかとは思いますが。
    しかし、考えていないということは、万が一でそのようになったらやはり指揮権は継続でクーデター側の思い通りになるのでしょうか?
    (もちろん現実的にはそういうシチュエーション自体が起こりえない、というのはこの質問以前に皆様の共通認識でしょうが、それは別としてなわけで)
    なお、小説的にはどうなったのでしょうか…。
    みなみ

  6. 法的な問題をさておかないで一応アメリカ合衆国の大統領に関する規定を押さえておくと(まあ質問者もご存じだとは思いますが)。

    憲法修正第25条 第4節
    副大統領および行政各部の長官の過半数または連邦議会が法律で定める他の機関の長の過半数が、上院の臨時議長および下院議長に対し、大統領がその職務上の権限と義務を遂行することができないという文書による申し立てを送付する時には、副大統領は直ちに大統領代理として、大統領職の権限と義務を遂行するものとする。
    その後、大統領が上院の臨時議長および下院議長に対し、不能が存在しないという文書による申し立てを送付する時には、大統領はその職務上の権限と義務を再び遂行する。ただし副大統領および行政各部の長官の過半数、または連邦議会が法律で定める他の機関の長の過半数が、上院の臨時議長および下院議長に対し、大統領がその職務上の権限と義務の遂行ができないという文書による申し立てを4日以内に送付する時は、この限りでない。この場合、連邦議会は、開会中でない時には、48時間以内にその目的のために会議を招集し、問題を決定する。もし、連邦議会が後者の文書による申し立てを受理してから21日以内に、または議会が開会中でない時は会議招集の要求があってから21日以内に、両議院の3分の2の投票により、大統領がその職務上の権限と義務を遂行することができないと決定する場合は、副大統領が大統領代理としてその職務を継続する。その反対の場合には、大統領はその職務上の権限と義務を再び行うものとする。

    と言うことで、閣僚の過半数が現在大統領は正常に職務を遂行出来る状態ではないと申し立てれば、副大統領が実質的に大統領に代わり軍最高司令官の地位に就くことになるようです。


    便利少尉

  7. 大統領が武力制圧をされた場合は国防長官に権限が移るような気が。
    自身ないけど。
    ど素人

  8. 法的な大統領の継承順位では閣僚よりも下院議長、上院仮議長の方が上位にいますし、閣僚の中でも国防長官は国務長官よりも下位です。
    便利少尉

  9. 確か有事の特殊な継承順位があったかと思ったのですが、ごめんなさいみつかりませんでした。
    勘違いかもしれないです。
    ど素人


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